「捨聖・一遍上人」

「捨聖・一遍上人」(梅谷繁樹/講談社現代新書)絶版

→著者はご存命で現在は知らないが出版当時、女子大の教授で時宗寺のご住職とのこと。
重要なのは「一遍上人全集」の編者のひとりであること。
そう、一遍研究の権威のおひとりであられる。
氏のご発言がもっとも一遍に関しては「正しい」ことになるお立場におられる先生だ。
「一遍上人全集」は現代語訳もついているので買おうか迷ったが(高いんすよね)、
あえて解釈のあまりついていない岩波文庫版で繰り返し読み込むことにした。
というのも、たしかに「正しい」のかもしれないが、
現代語訳を読んでしまうとこちらでいろいろ考える余地がなくなってしまうからだ。
小声で言うと、その現代語訳が絶対的に正解かはわからないのではないかと思う。
答えを先に押しつけられると、こちらに解釈の自由がなくなってしまう。
仏教における個人の救済は、そんなものはないのかもしれないが、
あるのだとしたら極めて個人的な新解釈の発見によるところが大きいような気がする。
失礼ながら梅谷氏編集の「一遍上人全集」にまだ目を通していない理由だ。

梅谷繁樹氏によると、「一遍上人語録」も怪しいものらしい。
というのも、「一遍上人語録」は一遍が書いたものではない。
しょせん弟子の聞き書きで、そのうえ出版は江戸時代とだいぶ遅れての話だ。
このため、後世の宗門的都合による教えの挿入の可能性を疑うと切りがなくなる。
梅谷氏にしたがうならば、一遍の「百利口語」は後世の創作とのことだ。
ほかの和讃のなかにも本人の作か疑われるものがあるという。
一遍の権威である梅谷氏の指摘なのだから、かなりのところ「正しい」のだろう。
しかし、それを言い始めてしまうと一遍自身も怪しいことになってしまう。
一遍は先達の空也の語録のようなものを指針として遊行していたようだ。
とはいえ、空也と一遍は時代が離れている。
一遍が生きるよすがとした空也の言葉が後世の創作だったという可能性もありうる。
そもそも「正しい」ことはない。少なくとも人間にはわからない。
正義や邪義を言うな。これが一遍の教えだったはずだ。
けれども、そう、そこが一遍の言葉でないという危険性もあるわけだ。
こうなるともうなにがなんだかわからなくなる。
考えてみたら、一遍もわからなかったはずである。だから、まかせた。信じた。

「又云、信といふは、まかすとよむなり。
他の意(こころ)にまかする故に、
人の言(ことば)と書(かけ)り」(「一遍上人語録」)


基本に立ち戻るならば、一遍の言葉だから「正しい」という姿勢はおかしい。
一遍によれば南無阿弥陀仏とは、「なにが正しいかわからない」という意味ではないか。
一遍も空也の言葉が「正しい」かどうかはわからなかったが、信じてまかせた。
果たして一遍の「正しい」教えをわかるとはどういうことなのか。
本当に一遍のことがわかったら大学教授や住職という地位を捨てて、
一遍のように全国を遊行してまわるのが「正しい」のか、それとも違うのか。

さて、踊り念仏のストリップ疑惑は男心を引き寄せるものがある。
梅谷住職は聖職者であられ、わたしのように煩悩にまみれてはいないだろうが、
それでも研究者としてストリップ疑惑に誠実に向き合っている。
わたしはストリップに近かったとしても構わないと思うが、
ご住職はあくまでもタテマエ論を支持するお立場とのことである。
もちろん、いまは梅谷氏の考え方も変わっているかもしれないし、
究極的な真相はタイムマシンが発明されるまではわからない。

「このように見てくると、この舞台は見物効果満点で、ショーに近いとも見られる。
中世末の『洛中洛外図』の「面白の花の都や」の先駆と見る人もいるほどである。
論者によっては、男女、とくに女(尼)が根を隠さずにおどるということで、
見物人に歓迎され、非難もされたのであろうと言う。
また、別の論者はこうした念仏勧進とひきかえに、木戸銭を徴収しただろうと言う。
たしかに、各種の桟敷が無料でないなら、
舞台(おどり屋)もタダでは建てられないだろう。
一遍は時衆を養う衣食の費用もいったはずである。
この考え方に一理あるが、タテマエ論で言うと、喜捨・布施によったものと見ないと、
捨聖一遍を中心とした時衆は
それこそ信仰の場から離れて売僧(まいす)になりはてたであろう」(P84)


現代でもAKB48にある意味で救われている底辺孤独層がいることは
(俗にキモオタなんて言われていますね、あはっ)、
一遍の権威・梅谷繁樹氏のご論考になにかの影響を与えはしないでしょうか。
タテマエではなくホンネのお話をうかがってみたいところです。
ぜんぜん関係ない話ですが、いくら浮世離れしたわたしだってAKB48のフルネーム、
ううん、たぶん5人くらいは言えます。

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