道が開けた!

ほとんど毎日のように歩いていた道があったのである。
昨年のあれはいつごろだっただろう。11月くらいではなかったかと思う。
いきなり工事が始まって通行止めになってしまったのである。
名目は護岸工事ということらしい。歩行者は迂回(うかい)をしなければならない。
毎日歩いていたから生意気に知ったようなことを言わせていただくが、
たぶん本当は工事をする必要などなかったと思う。
翌年度の予算確保と雇用対策のどちらが目的だったのかはわからない。
どちらにしても「いい」とお役所のお偉いさんは判断したのかもしれない。
工事が終了するのは翌年の3月末日だという。
いつもの道を桜が咲くころまで歩けなくなるのかと突然のことに驚いた。

とはいえ、世の中はこんなものだろう。思いどおりになると思っちゃいけない。
この道路工事でいろいろ金銭が動き、なかには助かったと思う人もいるはずだ。
いちいち不満に思ったところでなにも始まらない。気長に春が来るのを待とうと思った。
ところが、なのである。もうとっくに桜が満開になった3月の終わり、
まだ一部道路の工事は続いていたのである。
立て看板によると最終的に工事が終了するのは5月末日だという。
さすがにがっくりきたが、しかしお上(かみ)に文句を言っても詮ないこと。
こんなものか、いや、こんなものなのだと自分に言い聞かせた。
なにごとも思いどおりになると思ってはいけない。
世の中も人生も他人も、きっと思うようにならないのが当たり前なのである。

その通行止めがようやく本日5月17日解除されたのである。工事終了。
ということは、予定よりも2週間早かったことになる。
以前の道とまったく変わっていないではないか、などと嫌味を言うものではない。
影響を受けたニーチェの言葉にこういうものがある。
「少しいいことがあっただけでも、いっぱい喜ぼう」――。
思っていたより2週間も早く道が通行可能になったのだから、いっぱい喜ぼうではないか。
どのみち人生なんてろくなことがないんだから、
こういう小さな喜びをたいせつにしなかったらすぐに精神を病んでしまう。
道が開けてよかったと歩を進めながらおおいに満足したものである。

がらりと話を変えて人生の道について思ったことを書いてみたい。
よく成功者は「自分は新しい道を切り開いた」と誇るが、あれは実際どうなのだろうか。
というのも、道はまったくのひとりで造ることができるものではない。
成功者は複数のだれかが造ってくれていた道を、
たまたま新しく発見したというだけではないだろうか。
決してひとりで道を切り開いたわけではない。
もちろん、新しい道を発見するのに努力や才能が必要ないとまでは言わないけれども。
たとえばよく知らないが、IT産業の成り上がり者というのがいるらしい。
たしかに立派な人たちなのだろうが、
そもそもITのインフラが整っていなかったら彼らもうまくいかなかったのではないか。

大規模チェーン店の成功も流通のインフラ整備に依存していると言えなくもない。
これはいくらか無関係だが、
田舎に豪邸が多いのは高速道路建設の立退料が高額だったからという話を聞く。
少し話を変えて、たとえば漫画の世界の成功もおなじで、
先人が積み上げた結果を利用して新人は自分の世界を創造しているのである。
努力も才能もあるだろうけれど、断じてひとりのちからだけではない。
映画の世界もそうだろう。
先人のみならずスタッフの犠牲もあって映画監督ひとりが大きな顔をしているのである。
話を元に戻して経済界のことはまったく無知だが、
佐川急便躍進の背景には他の多くのものが成熟していなければならなかったはずだ。
逆も言えて、いまビジネスで成功するためには佐川急便は不可欠だろう。
とはいえ、もし高速道路が建設されていなかったら果たして佐川急便はうまくいったか。
そう考えると、土地成金の農家も佐川急便成功にひと役買っているのではないか。
佐川急便を例に出したのは、
たまたまうちの地区担当のおねえさんとよく挨拶を交わすからいま思い出しただけで、
他意はないと考えてください(だが、ほとんど利用しないのにあの人は偉い)。

いまなんの話をしているかと言うと、成功者さんへのお願いである。
どうか自分は新しく道を切り開いたなどとあまり偉ぶらないでください。
おそらくある成功の裏側には捨て石がたくさんあったのではないかと思うのである。
彼ら成功者のためを(いささか偽善的に)思っても、
成金はおのれを驕って声高に説教などしないほうがいいような気がする。
実証できない怪しげなことを言うが、説教をすると運が落ちるのではないか。
これは具体例でもなんでもないけれど、
10年以上むかし「マネーの虎」というテレビ番組があったそうだ。
不勉強なため(え?)視聴していないが、
なんでも成功者が新参のビジネス挑戦者に資金提供するという番組だったとか。
その代わりに成り上がり者の社長がこれでもかと上から目線の説教をしたという。
さて、「マネーの虎」に登場した社長のほとんどが
この10年で会社をつぶしているというではないか。
むろん、ここから成功者は説教をしないほうがいい、
という結論を導き出すのはひどく強引が過ぎるのは承知している。
おそらく、わたしが偉そうな説教を垂れ流す成功者が苦手なだけなのだろう。
たしかに成功者は説教をする権利があるのかもしれない。たとえば――。
こちらはまだつぶれていないが、某新興ステーキ屋の若手社長さんがおっしゃるよう、
成功者は高額納税をしているのだから発言の権利があるという言い分もわかる。
年少の成功者さんの言葉にはわたしもなるほどと思ったものだ。

そういえばむかしあるところのお偉いさんから「謙虚になれ」「あんたは厚顔だ」
とずいぶん一方的な説教をされた記憶があるけれど(執念深くてごめんなさい)、
あの企業は運を落としていないか心配している。
もっとも「マネーの虎」に出演していたという
国民的女性歌手の息子さん(実際は養子)はかなりの説教好きとお見受けしたが、
いまのところちっとも運が落ちている気配がない。
いわゆる二代目成功者はよほどの強い運を持っているのかもしれない。
最後にいかにも(成功者ならぬ)しもじもの人間らしいひがみを書いておくと、
元イケメン俳優の三田次男氏はとっくに結婚していることを最近知った。
あれだけの黒々としたご立派な経歴をお持ちの三田次男氏だが、
やはり家柄やイケメンは強く、年若い美人さんから愛されているようだ。
さらに女々しいことを書くと、ふたりのあいだには子どもも産まれたという。
元イケメン俳優の三田次男氏を嫌っているわけではなく、ただただうらやましい。
好きか嫌いかを問われたら、どちらかと言えば好きなほうかもしれない。
なぜなら、さすがに三田次男氏は人様に偉そうな説教をしないと思うからである。
最後に繰り返すが、道は自分だけで造ることができるものではないのではないか。
ほとんどだれもが人に造ってもらった道を歩いているようなところがある。
もちろん、海外に移民して開拓に成功したとか、
そういう話になると恐れ多くてわたしごときが絶対に物申せませんけれど。

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