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「何が終わり、何が始まっているのか」

「何が終わり、何が始まっているのか」(山田太一+福田和也/PHP研究所)絶版 *再読

→よほど執念深い性格なのだろう。
いまだ忘れられないのだが、むかしある山田太一ファンに苦言を呈したことがある。
というのも、ファンを名乗るくせに山田太一さんの著作をまったく読んでいなかったからだ。
たぶんこちらがおかしいのだろうが、
わたしは著作を読んでもいない作家の講演会に行く手合いがわからない。
わざわざ手間暇をかけて講演会に行くよりも読書のほうが短時間で豊富な情報を与えてくれる。
当人はわたしとおなじ高校の卒業生だったから、
偏差値的に識字障害という可能性はありえない。
どうしてみなさん講演会に行くまえに
話者の著作を1冊でも2冊でも読まないのだろう。
山田太一さんの本を1冊も読んでいないくせにファンだというのはおかしい!
うっかり世間知らずにもこういう思いをネット掲示板で公開してしまったら、
とある山田太一信者の女性から叩かれまくった。
そのときまで知らなかったが、作家のファンクラブのような世界では、
作家と近い距離にいるものほど(=面会した回数が多いほど)権力を有しているようだ。
こうしてわたしは現実=世間を知った。
いや、教えていただいた(嫌味ではなく本音で感謝してまっす、Eさんに敬礼♪)。
本当にまったく現実=世間というものは、書物とはまるで違うのである。
そして、どうやらたいがいの人は書物を読むのをあまり好まないようだ。

このため、うちのブログのように本に書かれた内容を引用するのは問題なのかもしれない。
なぜなら、著者はお金を払って時間を取って読んでくれた読者のために
貴重なご意見を開陳してくださっているのだから。
書物をネット上に引用してしまうと、だれでも無料で読めてしまう。
本来なら本など嫌いで読まない人にも情報が行きわたってしまうことになる。
著者はわざわざ時間と金をかけて(しつこくてすんません!)
自著を読んでくださる方のために公開した内容かもしれないのに。
この対談本の出版当時(1998年)は、
まさかネットがこんなに盛んになるとはだれも思っていなかったと思う。
うまく世渡りしたかったら、批判めいたことはあまりおおやけにしないほうがいいのである。
作家ならばみんなが聞いている講演会ではあまり本音を述べないほうがいい。
せいぜい売れても1万部くらいの本だから言えることもあるはずだ。
以下の山田太一先生のご発言がそうかどうかはわたしにはわからない。
いまのご年齢とお立場を考えて、まあ大丈夫だろうとこちらが勝手に判断した結果の引用だ。
ともあれ、興味深いご意見である。

「ちょっと飛躍した例かもしれませんが、テレビのプロデューサーなどは、
誰を起用しようかというときに、結局、自分に蓋をしてしまうんですね。
この人には嫌悪感というものがないのかと思うことが時々あります。
とにかく視聴率が取れるのなら誰でもいい。
「視聴率がどうあってもあいつじゃないと嫌だ」というのがないんですね。
冷たい、自我がないというか、
そういうふうな人たちが増えているという気がするんですね」(P126)


むかし山田太一さんの影響でシナリオライターに興味を持ったことがある。
その関係でいつだったかライター志望者向けの某テレビ局プロデューサーの講演会に行った。
どうして詳細を書かないのかと言うと、書くなとなかば脅されたからである。
みなさん、今日自分が話した内容はいっさいツイッター、ミクシィ、ブログ、
つまりネットに書かないでください。
コンクールの選考委員もしている権力者の言葉である。
もうむかしのことなのでよく覚えていないが当時、ある政治家がマスコミに向かって、
このこと(オフレコ)を公開したらその記者はどうなるかわかるね?
という脅迫をしたことがたいへんな話題になっていた。
なーんだ、テレビ局のお偉いさんも政治家とおなじかと思ったものである。
わたしはマスコミ社員のように大企業に守られていないから、
書くなと禁じられたことは断じて公開しない。
おそらく、あの発言が出世に響くだろうと小心にもおびえたのだと即座にわかった。
(わたしから見たらぜんぜん大したことではないんですよ)
とはいえ、権力者に軽々しく逆らうものではない。
このため、そのネタを外して穏便なところだけ、まあフィクションのようなものとして書く。
いつだったかどこかのテレビ局プロデューサーさんは、
やたら保険という言葉を講演会で使っていたような記憶がおぼろげながらある。
うちらはサラリーマンだから絶対に大失敗はできない。
こういうことをライター志望者のみなさんが知ったらショックかもしれないけれど――。
そう前置きをして、テレビドラマの作り方を説明してくださった。
とにかく保険をかけまくるのだという。
人気作家の原作小説、人気俳優、人気脚本家――。保険はかければかけるほどいい。
サラリーマンだから冒険なんてできない。テレビドラマとはそういうものだ。
このお話をうかがって以降、なにやらつきものが落ちたようにシナリオに関心がなくなった。
だから、反発どころか現実を教えていただいて感謝している面もある。

山田太一先生のいわばオフレコだけを公開するのは卑怯かもしれないと勝手に思い違え、
いつのことだかどこのことだかも定かではないうろ覚えのことを生意気にも書いてみました。

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