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「カップ酒スタイル」

「カップ酒スタイル」(いいざわ・たつや/ちくま文庫)

→著者がほとんど無私にカップ酒を愛しているのがよかったです。
カップ酒が好きで好きでたまらないというのが、どのページをめくっても伝わってきます。
それがなによりもすばらしく、とても好感を持ちました。
というのも、われわれ庶民はいまだ勘違いしていますから。
マスコミ系の大企業への信頼の話であります。
もしかして編集者は未知の才能を探しているとか思い込んでいませんか。
テレビは関係者が常時われわれ庶民に紹介すべきものを探していて、
厳しい選考に勝ち抜いたものが放送されているとか思っていませんか。
もちろん、現実はぜんぜん違うのであります。
出版社の編集者は、才能を見つけるのが仕事ではありません。
気が狂うほど大勢いる本を出したい人のなかからまだ可能性のあるものを選出し、
さんざん注文を出して自分好みに改変させてから、
これでもかと恩を着せて書籍を出版してあげるのが編集者のお仕事なのです。
感謝されることは何度もありましょうが、断じてだれかに感謝する仕事ではありません。
とはいえ、金の媒介しない出版業界はまだ健全なのでしょう。
なぜなら、テレビ業界なんてほんとうにひどいものですから。
関係者はひとり残らず高みにいて、対象をテレビに出してあげていると考えています。
だから、たとえば飲食店やホテルから、
テレビに出してあげたお礼をもらうのは当たり前。
キックバックのない対象に視線を向けることなど、
よほどの推薦者がいない限りは絶対にありません。
テレビ局関係者も編集者も無条件に盲目的になにかを好きになるということがない。
だから、本書はとても気持よかったです。
当時、カップ酒ブームというのがあったらしく、
おそらく編集者はこの波にうまく乗ったつもりなのでしょう。
しかし、著者はブームなど意に介さず、
ただただカップ酒を愛しているのが伝わってきてよかったです。
いつか著者の真似をして公園や電車でカップ酒をのんでみようと思いました。
ほんとうにいい本でした。打算抜きになにかに夢中になれる人は好きです。

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