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「猿は木から上手に落ちる」

「猿は木から上手に落ちる」(ひろさちや/双葉文庫)

→ひろさちや氏は宗教ライターではあるが、宗教家ではないのである。
この文庫本でも、思わず唖然とするほど人間くさいエピソードを記している。
ある出版社の社長から接待に誘われたという。
ひろ氏はその出版社から3冊書籍を出していた。
ところが、接待先が池袋にある大衆チェーン店だったことで腹を立てるのである。
学生も来るような安居酒屋に自分を呼ぶなんてとんでもない。
こんなところなら自分の金で来ることができるじゃないか。
接待するなら高級料亭に決まっているだろう?
自分は超過密スケジュールのなか時間を割いたのに、この待遇はふざけている。
以降、そこの出版社からの仕事はすべて断ったという(P154「親しき仲こそ礼儀あり」)。

ひろさちやさんはこういう怒りっぽい人なのである。
わたしだったら安居酒屋でご馳走してもらうだけでもたいへん嬉しいが、
多忙なひろさちや氏くらいになると高級料亭でなければダメなようだ。
もしかしたら、その社長さんはひろさんと友人関係になりたかったのではないか。
だから、会社の接待費ではなく、自分のポケットマネーで招待した。
著書から判断して「色即是空」を理解したこだわりのない人だと思っていた。
こういう考えで池袋の大衆居酒屋に誘ったら、ひろ氏から絶交されてしまう!
人間関係はほんと難しいよな。
まあ、本の内容から著者を推測してもたいがいは外れるということか。
本と書き手は違う。書いた文章と書いた人間は異なる。

しかし、こういうことを著書に書いてしまうひろ先生は脇が甘すぎやしないだろうか?
よほど怒り心頭だったということか。
おそらく、ひろ氏もわたしとおなじでとても恨み深い人なのだろう。
ちなみにこの文章を書いたときひろ氏は64歳である。
およそ聖人君子とは程遠い俗臭ぷんぷんたるひろさちや翁は、だから信頼に値する。
関係ないが、高級店が好きというのは、
ひろ氏が最近ネタをぱくっている遠藤周作とおなじだ。
「こだわりをなくそう」と著書では言いながら高級店にこだわりまくりのひろ先生!
「ゆったり過ごそう」と著書では言いながら時間の無駄を毛嫌いするひろ先生!
「いいかげんに生きよう」と著書では言いながら他人のいいかげんは許さないひろ先生!
わたしはひろさちやのファンであることを誇りに思う。

本書でもひろ先生はいいことを言っているのである。
怒りっぽい人にもかかわらず、ではなく、だからこそいろいろなことに気づくのだろう。
ひろさんは人生の万能薬があるという。それはなにか? 「日にち薬」である。
「日にち薬」というネーミングのセンスは抜群である。
ひろ氏はお母様からこの万能薬の名前を教わったという。
悲しみを治すのは「日にち薬」しかない。怒りも「日にち薬」にまかせたらいい。

「人間関係がこじれてしまって、それであなたが悩んでいるときだって、
無理にその解決をあせる必要はありません。
特別に何かしようとせず、ただ自然に成り行きにまかせておけばよいのです。
それが「日にち薬」なんですね。
その意味で、「日にち薬」は万能薬です。いろんなものに効き目を発揮します。
ほとんどあらゆる問題が、「日にち薬」で解決可能だと思います」(P43)


カウンセリングは「日にち薬」を処方しているようなものなのだろう。
ひろ氏は「日にち薬」にも欠点があるという。
それは一度に大量服用できないことである。10年分を1日で服用できない。
しかし、「日にち薬」ならぬ一般薬も大量服用したらよくなるというものではないから、
これは欠点なのかどうか。
考えてみたら、医者の処方する薬にそれほど意味はなく、
あれも「日にち薬」を処方していると言えなくもない。

さて、「日にち薬」はひろ先生に効いたのだろうか。
例の出版社の社長と果たしてその後、和解したのか。
社長さんとしたら、わけがわからない経験だったと思う。
著書の内容を信じて大衆居酒屋に招待したら、いきなり無視されるようになったのだから。
社長さんの傷は「日にち薬」で治ったはずである。
「ああ、ひろさんって、そういう人なのね」と――。
まあ、「人間なんてそんなもの」「人生なんてこんなもの」である。
この呪文もかなりの万能薬なのではないかと思っている。
なにかあってもこの呪文を唱えたら、あきらめがつく。
「人間なんてそんなもの」で「人生なんてこんなもの」なのだから仕方がない。

COMMENT

ダダ URL @
05/20 22:09
. 面白すぎてたまりません。
Yonda? URL @
05/21 06:39
ダダさんへ. 

人間って面白いですよね。みんな、だれもが、きっとあなたやわたしも。
きんぽうげ URL @
05/22 15:14
. 声に出して笑っちゃいました。
Yonda? URL @
05/22 22:55
きんぽうげさんへ. 

「40代 女性」のきんぽうげさん、10ヶ月ぶりのコメント、ありがとうございます。最近思うのは、笑うとか、泣くっていいですよね。生きる味わいは笑いと泣きにあるのかもしれません。喜びと悲しみが人生です。
きんぽうげ URL @
05/23 23:27
. よ、Yonda?さん、
ちょっとびっくりしました。
急に名前を当てられたみたいな気分で(苦笑)
一見読者とも言えるような私のコメントに ていねいにお返事くださり、ありがとうございます。
そうですね、笑ったり、泣いたり…。 負け?(死)に向かって進んでいるのかもしれないけれど、それぞれの悲喜に染まった人生を楽しめばいいのですね。
緻密な思考とどこか突きぬけたところのあるYonda?さんの色合いが、ささやかな私の人生にも刺激を与えてくれていますよ!
Yonda? URL @
05/24 07:35
きんぽうげさんへ. 

どもども。
最近の表にできない(大げさかな)トピックは女子高生とメールのやり取りをしたことですかね。考えてみたら、わたし、高校生の子どもがいてもおかしくない年齢なんです。なにがまずかったのか。怒らせたのか。いきなり女子高生からメールが来なくなっちゃいました。いやはや、生きているといろいろなことがあるものです。最近のテーマは親切です。もう来世に狙いを定めたので、現世ではせっせと功徳を積みたいと思っています。にゃは♪
クコの実 URL @
05/24 07:36
. comment
この話、面白悲しすぎる。
社長さんは、何故その居酒屋を選んだのかな?社長さんにとっては魅力のある場所で仏教を説く人と歓談するのにも相応しいと判断したのだろうか? それとも実は経費削減の意図が背後にあったのかな? 仏教家(ライター?)を試してみるような意図は無かっただろうとは思うが。(ただ、「親しき仲こそ礼儀あり」だから、ある程度は既に親しい間柄だったということはあるのでは。)
ひろ氏は、「居酒屋自体を否定しているのではない、自分に対し礼を失している点が悪いのだ」と言うのかな?「相手の社会的価値に見合った場を設けるのは礼儀なのだから、自分に対して礼を失した相手には、相応の罰を与えて抗議すべきで、それが己を尊ぶことだ」というのだろうか? そういう考え方は、世間では一般的だろうけど、ただ、仏教も同様な考え方をするものなのかどうか? 仏教のことは詳しくは知らないけど、それは、己の内面への教えであって、処世術(例えばこの場合のように相手に抗議の制裁を科すこと)とは別物ということなのかな?もしそういうことなら、「色即是空」と併せて普段からそういうことも教えないと誤解や混乱を招くし、二度と出版しないで絶交というのも宗教家にしては過激すぎる気がするけど、「時ぐすり」は和解は有り得るという示唆なのかな?
それともこのエピソードは、やっぱり単に所詮は人間の矛盾を露呈しているだけなのだろうか。
(でも、出版社は大きい出版社なのかな?社長さんもちょっと変わった社長さんな気がして面白いね。)
クコの実 URL @
05/26 03:44
. comment
御存じとは思いますが、ひろ氏の「怒るヒント」(出版2011年)という本には何かヒントを探せないでしょうかね。本の紹介には
「善人になるな。
卑屈になるな。
本当の人格者は、ちゃんと怒ります。
ひろ流・ムカムカしない方法。」とあり、
1章 日本人の「怒るとソン信仰」は狂ってる!
2章 ひろ流ストレス知らずの「怒る技術」
3章 「怒るのもアホらしいこと」をきっちり仕分ける術
4章 「その相手を許せるか許せないか」を本音で考える
5章 仏教、キリスト教、イスラム教は「怒り」をこう扱った
6章 どう怒るかは、どう生きるか
とあるので、関連性はあるかもしれないですね。
Yonda? URL @
05/27 22:11
クコの実さんへ. 

どうしてそう他人のことにこだわるんですか?
他人のことなんてどうだっていいじゃないですか!
これがひろイズムなんですよお♪
クコの実 URL @
05/29 11:25
. comment
人間は常に関心の対象です。「怒るヒント」は読まれたんですか?500冊も書いて謂わば布教しているとも言える人ですし何か回答らしきものがあるかもしれませんよ。自分も機会があったらざっと読んでみようと思います。
Yonda? URL @
06/01 21:12
クコの実さんへ. 

ごめんなさい。正直、どうでもいいんですよ。








 

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