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「ドラマを書く」

「ドラマを書く」(岡田惠和/ダイヤモンド社)

→シナリオの世界をピラミッドにたとえたら、いま頂点にいるのが岡田惠和さん。
というのも城戸賞選考委員、テレ朝なんたら賞選考委員。
シナリオ以外にもなぜかエッセイコンテストの選考委員としても
お姿を拝見することがちらほらある。とても偉い人なのである。
出世を狙うもののまえに門番として立ちはだかるのが岡田惠和さんである。
本書は岡田惠和氏がドラマ制作の裏側をライトなエッセイにしたもの。
雑誌「テレビ・ステーション」の連載に加筆修正を加えたものらしい。
本書を読みながらさすが一流の脚本家はエッセイを書いてもすごいと感服した。
ひとつ気づいたのは、本書のなかに文学作品がまったく登場しないこと。
お堅い文学だけではなく、そもそも小説の話がぜんぜん出てこないのである。
岡田惠和さんが強い影響を受けたという山田太一氏は文学畑出身といってもよい。
シナリオ世界では岡田惠和氏が山田太一氏の後継者と目されているようだ。
系譜を整理すると以下のようになる。

「海外文学・日本文学→山田太一→岡田惠和」

岡田惠和氏は父(山田太一)の影響は強いが祖父(文学)とは絶交しているのである。
この祖父との不仲が、岡田氏を人気脚本家にしたのだと思う。
シナリオライターは文学者のようなことをいってはならないのである。
おなじ物書きでも脚本家と小説家は大きく異なる。
そもそもシナリオは表に出てくることがない。
言語感覚が鋭い岡田惠和さんはシナリオを「仮想敵」と巧みに表現する。
シナリオは文学作品ではなくスタッフ、キャスト全員の「仮想敵」なのである。
岡田さんはあまり現場に顔を出さないという。

「まあ、現場というのは、シナリオライターが書いた本を基に、
いかに現実化していくか、という場所なので、
その場において脚本というのは、仮想敵であっても仕方ないと思うし、
その仮想敵に対して一致団結することでいいものができる、
という側面もあると思うので、
その敵がやたら顔出すのも……と何か遠慮してしまうわけです」(P21)


文学作品はひとりで書くがシナリオはそうではない。

「まあ、要するに作家が書いていったものに対して、
いろんな人がああでもないこうでもないと意見を言って、
その要求に応えて、本を直していかなければならない。
皆の合意がなければ、たとえ何度稿を重ねても終わらない。
それが本直しです」(P67)


「皆の合意」に向けて空気を読むのが岡田惠和さんは抜群にうまいのだと思う。
くだらぬ自己主張などしてはいけないのだろう。

「よく「演出とかで台本って、変えられちゃったりするわけでしょ?
それについてはどうなんですか?」という感じで言われることが多いんですが、
私は基本的にはOKです」(P112)


この寛容さこそ一流脚本家の才能なのではないかと思う。
わたしは違う世界を覗き見したくて本書を通読したけれど、
もしシナリオライター志願者が読んだら、とても得るものが多いのではないか。
たいへんな名著であった。
やはりどの分野でも一流といわれる才能ある人の文章に触れると刺激になる。

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