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「河合隼雄の人生読本」

「河合隼雄の人生読本」(河合隼雄/潮出版社)

→書評(読書感想エッセイ)を集めて1冊としたもの。
よく河合さんが言う「賭ける」の意味がわかったような気がする。
「人生は賭けてなきゃダメだ」としばしば氏は仰せになる。
人生で岐路に立たされることがある。このときの態度が問題のようだ。
Aにしたらいいか、Bにしたらいいか人は迷う。
たとえば、本当のことを告げようか、それともここは嘘をついたほうがいいのか。
こういう「ふたつにひとつ」の相談がきたとき、
河合隼雄さんは「わかりません」と答えるという。
どうしてなのか。
ここで河合さんが「正しい答え」(そんなものはないのだが、あるとして)を
言ってしまうと、相談者は責任を心理療法家に持たせてしまう。
「京都大学の偉い先生がおっしゃったので」と責任を回避してしまう。
これでは全身で問題にぶつかることができなくなる。
「賭ける」ことから逃げている。
河合さんは二者択一問題の相談者夫婦になんと言ったか。

「それで、私が言ったのは、どちらが正しいかということを考えるのではなくて、
私たちはこのようにしようというふうに考えてください。
ただし、自分たちがこう決めたからには、
全責任をとってその子に会う覚悟をしてほしいのであって、
正しい方法を知ろうとするのではない、ということです」(P135)


これが河合隼雄さんの言う「賭ける」の意味かと思われる。
我われはなにか迷うとすぐに正しい方法を知ろうとする。
だれか偉い人に相談して、意見に従おうとしてしまう。
しかし、それではいけないと河合さんは言うのである。
全責任をとって自分で決めよう。これが「賭ける」ということだ。全身で賭けてみろ。

ふと思ったが、海外一人旅を経験すると「賭ける」ことに慣れるのではないか。
なるべくならガイドブックを持たないほうがいい。
泊まるホテルからレストランまですべて自分で決めると「賭ける」のに強くなる。
行き先もその場その場で決めるともっといい。
バス1本乗り遅れたことで、かえって貴重な出会いに恵まれるのが一人旅である。
そして、おそらく人生も似たようなものだろうという直感が芽生える。
ツアーのパック旅行に参加してしまうと楽ちんで快適で効率的だけれど、
おそらくそのぶんつまらないような気がする(経験がないので推測だが)。
幸運にも海外一人旅をしたことがある。
強く記憶に残っているのは、ガイドブックに載っていない地域を旅したときの光景だ。
いま酒をのみながらたまにじんわり懐かしく思い返したりするのは、
決まってトラブルやハプニングといった当時は不愉快に感じていたことなのだ。
人生にもおなじことが言えるのかもしれない。
もしあの世があるのなら――。
たくさんこの世で「賭ける」経験をしておいたほうが、どうやらあの世では楽しめそうである。

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