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「浮雲」(水木洋子/日本シナリオ文学全集9」理論社)絶版

→映画シナリオ。昭和30年度キネマ旬報ベストワン作品。
男女の色恋の綾がわかる中年にならないとこの映画はわからないようで、
ならこちらの理解に及ばないのはもうどうしようもないのだと思う。
おそらく一生、この作品はわからないような気がする。
それでもシナリオではなく映像がいい作品ではないか、との推測はつく。

腐れ縁というのか、妻が別にいるダメ男と美女がくっついたり離れたりを繰り返す。
まあそれだけの話なのだが、
識者はここに男女間の真実が描かれているなどと絶賛するのだろう。
やたら酒をのむシーンの多いのが印象的だった。
どうして戦後の退廃的な風潮のなかでしだいに堕ちていく男女を
美しいと錯覚するものが多いのか考えてみたが、人間はそういうふうにできているのかな。
自分ができないことに憧れを持つのが人間で、映画はいわば大衆の夢を描くもの。
そうだとしたら、元祖痛い子、不思議ちゃんである林芙美子の原作を映画化した本作が、
広く絶賛されるのもある種の必然なのかもしれない。
映画を観ないでシナリオだけでこのようなことを論じるのが失礼なのは承知しているが、
たぶん映像には最後までついていけないような気がするのでどうかお許しください。
(正直、いまどき白黒の映画を観るとか拷問じゃないかと思う)

絵画的な美しさを生来理解できぬ言葉フェチ(物語フェチ)のわたしは、
この作品のテーマとなるセリフを引用するにとどめる。
絵は言葉を消す効果を持つから、
あんがいこの映画の主題に気づいていないファンもいるかもしれないと思うゆえ。
しかし、映画ファンの多くがまったく脚本家を無視して作品を論じるのには驚く。
映画監督はいいとこ取りをできる絶対的なカリスマなのだろう。

富岡「疲れたのかい?」
ゆき子「……私たちって、行く処がないみたいね……」
富岡「……そうだな……どっか、遠くへ、行こうか……」
ゆき子「(思わず顔を見る)」(P127)


こうして男女は寄り添って堕ちていくのである。
まるで戦後復興していく日本の影絵のように。

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