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「夜叉ヶ池」

「夜叉ヶ池」(泉鏡花/岩波文庫)

→鏡花の戯曲は小説よりもはるかにいい。
きちんとした見世物=大衆芸能になっていると思う。
「夜叉ヶ池」には喧嘩シーン、エロシーン、笑わせシーンすべてが入っている。
村の鐘楼守りの夫婦の物語である。
夫婦は定時に鐘を撞くことを定めとして課している。
これをやらないと水害が起こるという言い伝えがあるからである。
新参者が現われることで、こういう事情が明らかになる。
夫婦の男のほうは、むかし学者としてこの村に来て、女と知り合い居ついてしまった。
新参者はこの男の旧友である。
男二人は山頂にあるという夜叉ヶ池に出かけた晩、村の長たちが女のもとにやってくる。
雨が降らないので、古くから伝わる雨乞いの儀式をやるというのである。
それがなんとも猥褻(わいせつ)ですばらしい。

「絶体絶命の旱(ひでり)の時には、
村第一の美女を取って裸体(はだか)に剥(む)き……
黒牛の背に、鞍(くら)置かず、荒縄に縛(いまし)める」(P60)


美女を裸にひん剥いて、馬に縛りつけて、どうするか。
この犠牲(いけにえ)を夜叉ヶ池の竜神に捧げるのである。
が、美女の「生命(いのち)は取らぬ」。

「さるかわり、背に裸身(はだかみ)の美女を乗せたまま、
池のほとりで牛を屠(ほふ)って、
角(つの)ある頭(こうべ)と、尾を添えて、これを供える。
……肉は取って、村一同冷酒(ひやざけ)を飲んで啖(くら)えば、
一天忽(たちま)ちに墨を流して、三日の雨が降灌(ふりそそ)ぐ。
田も畠(はた)も蘇生(よみがえ)るとあるわい。
昔から一度もその験(しるし)のない事はない」(P60)


いいな、この焼肉パーティーに参加したいよ、おら。
ああっ、いますごい発見をしてしまった!
これはまさしく「ノーパンしゃぶしゃぶ」の起源ではないか!
これは民俗学的な大発見かもしれないぞ!
むかしから日本人は女性の裸を鑑賞しながら牛肉を食うことを好んだ!

ノーパンしゃぶしゃぶは日本の古き良き伝統文化!

話を芝居に戻すと、この女のピンチに男二人が戻ってくるのである。
ヒロインのピンチにヒーローがやってくるのは大衆受けするいいシーンである。
ここで葛藤が生じるわけだ。
男たちは女を村から救い出そうとする。もちろん、村のお偉いさんたちは反対だ。
女といえば鐘を撞く定めのことを気にしている。
ここでチャンバラになる。チャンチャンバラバラは客のもっとも好むシーン。
最後は女が自殺。男はもう鐘が鳴らせないように、紐を切ってしまう。
すると定めを破った罰として、洪水が起こり、みなのみこまれてしまう。

この洪水を天上から眺めるものがいる。
妖怪たちである。夜叉ヶ池に住む姫様たち御一行だ。
芝居は人間たちのパートと妖怪たちのパートに分かれている。
鏡花は人間世界の裏側に存在する妖怪たちを見る視力を有していた。
鏡花は見えないものを見る作家であったということだ。

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