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「男性自身 暗がりの煙草」

「男性自身 暗がりの煙草」(山口瞳/新潮文庫)絶版

→結局、人間の一生はどの親から生まれたかですべてが決まるのではないか。
というのも、人の一生を支配するのは当人の好き嫌いである。
学校、就職、結婚からしてみなみな、
「好きだから好き」「嫌いだから嫌い」の感情論で最終的には決定される。
ところが、この好き嫌いというものは絶望的に両親に支配されるのである。
といっても、両親の好みがそのまま遺伝するというわけではない。
親が嫌っていたものを、嫌っていたからという理由で好きになるものも多いだろう。
にもかかわらず、ではなく、だから、人間は生涯両親の影響から逃れられない。
親が嫌いなものを好きになるのも、つまるところ親の影響下にいるのだから。
身近な例で言えば、日に三度三度食うメシだってそうではないか。
おのれの好き嫌いを極限まで「男性自身」で追求した山口瞳氏の言葉から――。

「私のもっとも好きな食物は、
牛肉屋やコロッケ屋で売っている出来あいの野菜サラダである。
ポテトの甘みと芥子(からし)との調和は絶妙であると思う。
母は、こういうものを決して買ってくれなかった。
きっと、腐敗しやすいというのが根拠であったのだろうと思う。
たしかに品のいいものではない。
私は、これを八百グラムばかり買ってきて、冷蔵庫で冷やしてから、
丼をかかえこんで食するのを非常なる快とする。
第一に、やすくって腹にたまるのがいいや。
母に対する積年の復讐をとげているような心持がする」(P70)


いまでいう大人買いなのはわかるが、しかし八百グラムはやはり多すぎる。

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