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「読んでいない絵本」

「読んでいない絵本」(山田太一/小学館)

→三島由紀夫や大岡昇平、小林秀雄が好きだった美青年は、
教育学部を出たら学校の先生にでもなって小説を書くつもりだった。
それがどうしてか松竹に入社して、のちにテレビライターとして独立することになる。
まったく夢などかなっていないのである。
山口瞳がエッセイ「男性自身」に「人生は仮り末代」と書いている。
仮り末代とは、「仮に住んだつもりが、そのままになってしまうこと」。
「ま、人生なんて、そんなものさ」という庶民の言葉だ。

もし山田太一が人生計画通りに教師をしながら小説を書いていたらどうなっていただろう。
資質と合わない(?)純文学的なものを書いただろうから(わからないが)、
いまのように大成しなかったかもしれない。
いや、学生時代にも小説コンクールで佳作をとっているから、
文学の世界でもいいところまでいったという可能性も否定できない。
しかし、いまほど多くのファンを持つ国民的作家にはなっていなかっただろう。
少なくとも、なろうと思っていなかったのはたしかだと思う。
とはいえ、いまのように大御所脚本家になるのが幸福かはわからない。
テレビドラマは多くの視聴者に見られる(見てもらえる)。
必然としてレベルの低い批評に何度も傷ついたのではないか。
見てほしいと思っている識者からは見向きもされず落胆したかもしれない。

そのうえ、である。
どうして教壇の机でこっそり懸賞小説を書いている教員が不幸と決めつけられようか。
傷つきやすい優しさを持った人間は無名で終わったほうが幸福かもしれないのだ。
いまのライターが脚本家として山田太一の地位まで到達することはないと言い切ってよい。
しかし、多くのライター(志願者)があこがれるこの大御所脚本家は、
断じて人生が思うようになったとは考えていないはずである。

「人生というものはそういうものなのだろう」(P16)

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