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【ご報告】11月2日に買った本

定年老人にひそかに人気のカテゴリー「買った本の報告」を1日限定で復活する。
本日、「第52回 東京名物神田古本まつり」に遠路はるばるおもむく。
むかしは近所に住んでいたため、
開催中は二度や三度は足を運んだものだが世は無常である。
いまや田舎住まいの身(ぎりぎり都内)。たしか去年は行かなかったのではなかったか。
今年も本来なら行かないつもりだった。
というのも、この「東京名物」とははなはだ相性が悪いからだ。
いままで神田古本まつりで大収穫があったという記憶がない。
そのうえ客層もあまりよくない。言い方は悪いが、シロートばかりなのである。
観光気分でカップルや仲間連れで来るものがやたら多い。
だが、本とはそういうものではないだろう。
書物はどうしようもなく孤独な人間が買い求め、孤独のただなかで読むものではなかったか。
読書とは、まさしく孤独の快楽ではないか。

神田古本まつりは明日で終わりだが、この時期に来るのがいちばんいいと確信する。
なぜなら終了直前、さらに平日のため人が少ないからである。
どのみち、このフェスティバルでは掘出物とは縁がないのだ。
ならば混雑する開催初日や休日に行くのは阿呆のすること。
終わりが近く雰囲気もだらけてきた平日に冷やかし半分で行くのが通というものだろう。
いざ到着してもわたしのような神保町の常連(過去です)は、
特設ブースになど目を向けない。
いくら古本まつりとはいえ、お得なのはいつもの地元の古本屋なのである。
ちなみに、神保町で好きなのは田村書店ワゴンと小宮山書店ガレージセール。
景気づけに田村さんのワゴンから1冊拾っておく。

「アラブ飲酒詩選」(アブー・ヌワース/岩波文庫)品切れ 100円

この後、小宮山書店やひいきの書店を物色するもめぼしいものはなし。
ようやくのんびりと特設ブースに目を向けるが、
こんなに本があるのにわたしのほしい本は1冊もない。
しかし、気持はいささかも荒れていない。むしろ太平楽。
なぜなら、はなから期待していないため。期待するから失望するのである。
これは本のみならず対人関係や社会全般、自然現象にまで当てはまるのではないか。
むかしから神田古本まつりとは相性が悪かったので、この日もまったく期待していない。
がために、買いたい本がなくてもさらさら痛痒などない。
かえって予定どおり、計画どおりといった笑みさえ浮かべる始末。

野外の特設ブースも残りわずかとなったところで1冊購入を迷う本にめぐりあう。
「市川森一センチメンタルドラマ集」(映人社)である。テレビドラマのシナリオ集。
定価は2千5百円で、売価は2千円になっている。
心憎いのは値札の3千円が赤線で消されて割引価格の2千円になっているところ。
このような割引にケチの男は弱いのである。買おうかどうか迷い三度手に持つ。
問題なのは価格ばかりではない。もうシナリオの勉強などやめようと思っているからだ。
「ビニールを開けましょうか」
ブースのおばさんから声がかかる。この店のオーナー筋のようだ。
「実際に中身を見ないとわからないんじゃない?」
そう、このシナリオ集はビニールがかかっていたのである。
「いえ、そんなことをしてもらうと、買わなきゃいけないような気になりますから」
わたしは断わる。
が、「いいから、いいから」とおばさんはビニールを取り外す。
その強引さに思わず本音をもらしてしまう。
「この本、むかし千5百円で見かけたことがあって、買おうか迷ったんです」
繰り返しになるが、いまこの本の価格は2千円。
千5百円だったら買おうと思っていたのは事実。
これではまるであからさまに5百円値引きしてくれと言っているようなものである。
なんと図々しい客か。古本屋のおばさんから「はい」と本を渡される。
むかし荻窪のささま書店でこの本の美品を千5百円で見かけたことがある。
当時は山田太一作品が好きなだけで、
まさか自分がシナリオを書くようになるとは思ってもいなかった。
本を開くと目次に書き込みがあるのを見つけてしまう。読んだかどうかのチェックである。
「ここに書き込みがあるんですけれど」
内心では、これでもう千5百円に負けてもらい、買う羽目になるのだと思い込んでいた。
しかし、おばちゃんは値段を下げようとは断じて言わない。
「ほら、ビニールを開いてみてよかったじゃない(=私は正しい?)」
しばらく沈黙のときが流れた。
「ごめんなさい」となぜかわたしがあやまり、その場から逃げ出した。

開き直る。居直る。
もうシナリオの勉強などやめようと思っていたのだから、
これでいいのだ、と自分に言い聞かせる。
いまという時代にシナリオを勉強するのは無意味である。
どれだけがんばっていいシナリオを書いても、
どうせ現場で断りもなく好き勝手に書き換えられてしまう。
それ以前に、である。
シナリオが現場に行くまでの間にも10回、20回、
ときには30回と書き直しをやらされるのが映像業界の通例だ。
これは実際にお世話になったプロデューサーさんからうかがった話だが、
なかには決定稿に近づいてはじめて本気になる脚本家もいるという。
名前はぼかすが、元脚本家で有名校で講師をしているS氏も、
最初はわざと手を抜きPの顔を立てるというテクニックを指南書で紹介していた。
そもそもシナリオなど(現代では)一生懸命に勉強するものではないのかもしれない。
重要なのは、いかにお偉いさんに気に入られるか。
自分の書きたいものではなく、いかに他人の書いてほしいと思っていることを書くか。
それよりなにより、いかに権力者にかわいがってもらうか。
いまという時代、脚本家に必要なのは創作力ではなく対人能力なのだろう。
だから、むしろシナリオの勉強などするのは邪魔になる。
いかに自分を消すかが勝負。どのようにして上層部のお偉いさんに媚びを売るか。
名門シナリオ学校の講師から、「僕の言ったように書け」と何度も叱られたのを思い出す。
「僕の言ったとおりそのままに書きなさい」
「どうせライターなんか自分の好きなものを書けないんだよ」
ライター経験のない講師だったが、彼の教えはあるいは正しかったのかもしれない。
だとしたら、「市川森一センチメンタルドラマ集」など買わなくてよかった。

話を神田古本まつりに戻す。この次のブースで長年の探求書にめぐりあう。
こういうことのあるのが、古書の世界なのである。
手に取ったとき、思わず小声で「キター」と叫んでしまった。
5年以上も探していた本ではないか。

「シェピー」(「サマセット・モーム全集22 戯曲集Ⅱ」/新潮社)絶版 800円

むかし郊外のさびれた古本屋で見かけたが2千円以上したと記憶している。
高いフザケルナと買わなかった。
あまり知られていないが、モームの戯曲はとにかくおもしろいのである。
私見では、モームは小説よりも劇作の才があったような気がする。
サマセット・モーム、テレンス・ラティガン、ノエル・カワードは、
あまり知られていない英国の天才劇作家たちである。
ちなみに、わたしはラティガンを勝手にイギリスの山田太一と命名している。

みみっちいと侮られる方がいるかもしれない。本に金を惜しむな。
最初に見つけたときに(たとえ少々高価でも)買っていればよかったのではないか。
それは違うというのがわたしの考えだ。
いきなりいじけた皮肉を言うが裕福な人気作家なんざ本当に幸福かしら。
どんな高価な本でも迷わず買えてしまうというのは、
むしろ人生の楽しみを失しているのではないか。
買おうかどうか迷うのが楽しいのである。
そのうえどんな高額な書物をいくら購入したところで、
売れっ子作家は社交や執筆に忙しくて好きな本を読む暇さえないと思う。
探求書発見で勢いづいたか、この次のブースでも買物をする。

「ブッダの道 二千四百年」(横山宗一郎/京都書院)絶版 200円
「海神別荘 他二篇」(泉鏡花/岩波文庫) 200円
「新潮日本文学アルバム 泉鏡花」(新潮社) 400円


先ほどのモーム戯曲集購入の際もそうであったが、
レシートが出ないのでつい「領収書をください」などと言ってしまう。
けっ、文筆業者や出版業界人を気取っているつもりかよ。
とはいえ、いま考えたら領収書なんざ不要だったのかもしれない。
というのも、今年の年収はおそらく……。
予定では、目論見では、あれかあれを受賞していたから今年は3百万円の年収だったのだ。
そのときに書籍代を経費で落とそうと思っていた。
これは明々白々の自慢だが(こんなことが自慢になるのがそもそもおかしいのだけれど)、
昨年度は職業欄ライターで確定申告をした(えっへん)。
今年度も同様にするつもりで、さらに収入は最低でも3百万円にいたる腹づもりであった。
しかし、実際は、その……ああ……もし来年も……再来年は……いったいどうなるのだろう。
いや、来年のことなど考えるのはやめよう。先々なにが起こるかわからない。
東京大地震が発生してみんな死んでしまうかもしれない。
自然災害ではなく交通事故、あるいは脳卒中や心筋梗塞でころり往生することもありうる。
ハイパーインフレが起こって、
価値体系がメチャクチャになるかもしれない(万札がいまの1円玉程度に!)。
あるいはもしかしたら大会社のエリート女子社員が、
かわいそうなわたしを憐れんでヒモとして飼ってくれるかもしれない。
そうだ、希望はまだある。本年も年末ジャンボ宝くじは1枚だけ買うつもり。
今年はなんだかとても当たりそうな気がするのである。大丈夫。なんとかなる。
といっても、たとえ3億円当たろうが、わたしは生活を変えるつもりはない。
贅沢は性分に合わないし、金になびく女性に興味を持てない。
おそらく、万が一大富豪になったとしても(いやきっと当たる! 今年は当たる!)、
以前とつゆ変わらずコンクールに応募して落選を嘆くことだろう。
金の心配はしないようにしよう。いざとなったら、きっとなんとかなる。
私淑かつ兄事する芥川賞作家の西村賢太氏は、
同棲相手の実家からまんまと350万もの大金を借りるのに成功したというではないか!
人生なにが起こるかわからない。

三省堂神田本店で山田太一さんの最新刊を買う。
まえに赤羽の中型書店で探したけれどなかったから、
おそらくロット数(出版数)が相当少ないのだろう。
むかしからこの国では戯曲やシナリオの類は売れないと決まっている。
そうと知りながら、ほどほどの価格で限られたファンのために出版してくれた小学館に感謝。

「読んでいない絵本」(山田太一/小学館) 1680円

収録作品は短編小説×5、戯曲1、シナリオ1。
みなさんもどうかご購入ください。
こちらから↓



こういうふうにアマゾンの広告を張っていると、
さぞかしわたしが儲かっているように思われるのではありませんか?
アハハ、ばらしちゃおう。先月の「本の山」広告収益は438円!
わたしからしたらブックオフで本が4冊も買えるのだから、これでも十分にありがたい。
そうそう、どうせ焼け石に水ですから、
上記のアマゾン広告などクリックなさらなくて結構です。
文字ばかりのうちのブログにとっては広告=飾りなので。

さあて、11月が始まりました。みんな、がんばろうぜ! えいえいおう♪
(関係各位様、コメント返答等しばらくお待ちください)

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