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古典は自分で自分から

これはいつか成功したら披露しようと思っていた私事なのだが、
いつまで経っても成功しないし、今後もハテナだから書いてしまおう。
昨年生まれてはじめて頂いた原稿料で買ったものがあるのだ。
シナリオで手に入れたお金なのだからシナリオに投資しようと思った。
昨夏、新宿京王百貨店で開かれた古本祭で、
うさぎ書林さんから日本シナリオ文学全集全12巻を1万円で購入した。
売れっ子になったら経費でナンタラと怪しげな病的妄想をしながら、である(苦笑)。
こちらの経済感覚からいったら1万円は大金で、
支払ったとき目まいに近い興奮を覚えた。

数日前ふと思いついてこの全集を読み始めた。
裏を返せば1年間、読まないで放っておいた。
黒沢映画のシナリオを読んだらめっぽうおもしろいのである。通俗的で実にいい。
次に小津先生作品のシナリオに手をつけたら天地がひっくり返ったようだった。
読みながらどうしてか涙がとまらないのである。
読書しながらメモする癖があるのだが、いくつも「イイナ、イイナ」と記録した。
いまのところ「麦秋」ほど感動した映画シナリオはないといってよい。
テレビライター山田太一先生の作品以外で、
こうも胸打たれるシナリオがあるとは思わなかった。

重要なのは、自分で自分から読んだということなのだろう。
大学生が芸術学部や映像学科で課題として鑑賞させられたわけではない。
無理やりでない、つまり自然に触れたことがよかったのではないか。
小津作品といえばシナリオ学校の所長さんから「東京物語」だけは観ろ、
と言われて嫌々鑑賞したけれど、感想は「早送りしたい!」でしかなかった。
おそらく名作は他人から強制されたら輝きを剥奪されるのだろう。
古典にとって大切なのは、自分で自分から接すること!
「読みなさい」「観なさい」ではなく、「読んでみようか」「観てみようか」――。
たぶん小津作品など二十代で触れてもまったく価値がわからないと思う。

この個人的体験から一般論を述べるのは飛躍で暴論なのだろうが、
それでも書いておきたいのは、待つことがいかに大事かである。
待つ=あえて読まない時間はどれほど貴重か!
親や教師は名作を名作だからと早い時期に強制的に鑑賞させようとしてくる。
しかし、それでは感動作の味がわからなくなるばかりなのだ。
あえて名作を教えない、見せない、読ませないことが、どれほど若者を育てることか。
自分で自分から経験した真実ほど重いものはないのである。
うさぎ書林さんから買った日本シナリオ文学全集にはいささかラインがあったが、
それでもいい買物をしたと思う。
そもそもどうしてこの全集を買ったかといえば臨時収入があったからなので、
ここ数日に得た深い感動を、
去年お仕事をくださったプロデューサーさんに感謝してこの記事を終えよう。
(名作はガキをおとなにするのか。きれいできたないおとなに!)

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