「売れないのは誰のせい?」

「売れないのは誰のせい? 最新マーケティング入門」(山本直人/新潮新書)

→とてもよくできた本。よく名前を聞くけれど
実態がよくわからないマーケティングについてわかりやすく書かれている。
2時間強でマーケティングの基礎知識が得られ満足度は極めて高い。良書だと思う。

マーケティングとはなにか? 効率的に商品を売る仕組みである。
どこをマーケティングはいじるか? 4Pだ。
製品(Product)――いまなにが求められているか?
価格(Price)――安いほうがいいのか? 高いほうがいいのか?
流通(Place)――どこで売ればいいのか?
プロモーション(Promotion)――消費者への告知=宣伝をどうしたら売れるか?

「マーケティング活動をおこなうためには、
四つのPの観点でもっとも効果的な手を打っていく。
そして、どのような手が効果的かを見極めるためには
集積・体系化された知恵を具体的事例に即して学ぶことが重要になる」(P21)


著者の主観によると、
あらゆる業種でマーケティング信仰(失礼!)が始まったのはバブル崩壊以降らしい。
マーケティングが重視されるようにいたった背景は以下である。
1.競争が激化した(規制緩和、安売り合戦)。
2.社会が成熟した(大衆が広告に騙されなくなった)。
3.情報環境が激変した(インターネットの普及)。

おそらくマーケティングとは(個人ではなく)企業の成功マニュアルなのだろう。
この小著でマーケティングが理解できたという錯覚のもとに、
とんでもない発言をしようと思う。マーケティングってインチキじゃないですか?
いわば経済学と心理学の実践版がマーケティングなわけでしょう。
つまり、過去の知恵の集積のもとに売れる新商品を4P各分野で打ち出す。
「こうしたらかならず売れる」という(自称)科学的=学問的な成功法則。
そんなもんあるわけないじゃん、バーカ!
――と人生経験豊富なお年寄りなら醒めた目で見破れるのではありませんか?

どういうことかと言うと――。
「たまごっち」が売れた理由は後付けでいくらでも説明できるけれども、
その理論からは「たまごっち」のような新商品を生み出すことができない!
せいぜい「たまごっち」の模倣品、後発商品を売り出すくらいが関の山!
つまり、マーケティングで得られるのは小さな成功で大ヒットではない!
失敗は減らせるかもしれないが(それもどうだか……)大成功は望めない!
まあ、大ヒットした商品というのは言うなれば偶然なのね。たまたま売れた。
計算して作れるものではない。むしろ計算度外視から大ヒットは生まれる。
人生が思うようにいかないのに、どうして商売でなら思うようにいくと思うのか?

ところが、こういった常識=世間知に欠けるものがいまは多いのだろう。
新しい学問(正しい!)という触れ込みに、
どの業界も自分(たち)の勘よりもマーケティングの情報を信じるようになっている。
あたかも新興宗教のように、である。みんなしてマーケティングに騙されている。
失敗しても、もしマーケティングをしていなかったらもっと大失敗していたと思う(笑)。
そのごまかしは新興宗教が信者に使うテクニックだからな!
いまあらゆるジャンルで均一化が進んでいるような気がするが(おなじ歌、顔、ドラマ)、
あれはマーケティングのせいではないか(=正しい売れる商品がある)?
いいかい、正しい商品が売れるんじゃないぞ! 売れた商品が正しいんだ!

いえいえ、本書はとてもいい本なのだ。マーケティングの思想が気に食わないだけ。
どうかそのことをご了承ください。この本を読んで得たものはずいぶん多い。
広告=騙しのテクニックは、どの学問よりも生活に密着していて興味深い。
繰り返すが、本書は名著である(マーケティングは怪しいけれど)。

「消費の促進は、あくまでも「消費によって幸せになる」
という図柄があることで、成立してきたのである」(P89)


あらゆる広告が(本来なら定義できない)幸福を売っているということだ。
「これを買えば幸せになる」といかに消費者を騙すかが広告である。

「マーケティングは常に社会の変化を見つめながら企画を立てるが、
企業は消費者に明るい未来を提示しようとする」(P89)


企業がスポンサーとなるテレビや映画において、
マーケティング信仰が盛んな現代「暗い話」はご法度になってしまった。

最新のマーケティングではテレビCMの非効率性が論じられているらしい。
でも、庶民の常識で考えたら「いまごろ~?」という話じゃないか。
だって、みなさんテレビのCMを見てなにかものを買ったことなんてありますか?
ぶっちゃけ、どう考えたってテレビCMなんか意味ないでしょ?
最新の(自称)学問=マーケティング様がようやく庶民の知恵に追いついたようである。
しかし、これがばれてしまうとテレビ局社員の超高収入が維持できない。
いま流行に敏感なフジテレビさんが迷走しているゆえんであろう(苦笑)。

おまけとして書くが、本書によるとダメな経営者ほどブランド信仰に陥るらしい。
安売り合戦を克服できる唯一の手段とされているのがブランドである。
自社のブランドをいかに高めるか。
ブランド力があれば消費者は高くても買ってくれる。
このブランド信仰にすがりつき、
現実を見ないでロゴやマークにばかりこだわるのがダメな経営者という。
思えば、母校のシナリオ学校もなにやら新たなロゴを……。
著者によると、マーケティングの要諦は「他者を知るということ」に尽きるらしい。
顧客の立場になる。
このブログでも顧客の感想を書いているので、
例のスクールにはぜひマーケティングの参考にしてもらいたい。
あ、でも、マーケティングなんかに頼ると、下手すると潰れるとわたしは思うがね。

この本のタイトルはマーケティングを要約していてとてもいいと思う。
「売れないのは誰のせい?」――誰のせいでもないんじゃないかな?
もう物はとっくに行き渡って、きっとみんな欲しいものがないんだと思うけど、どう?

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