FC2ブログ

「おはなしの知恵」

「おはなしの知恵」(河合隼雄/朝日文庫)

→すべては「おはなし」だという地点に河合隼雄は立つ。

「極端な言い方をすると、自然科学もおはなしの一種なのだが、
外的事物を操作するのに飛び抜けて優秀な「おはなし」だと言うべきだろう。
それがあまりに有効なので、自然科学の語るおはなしが、
そのまま「現実」だと思い違いをはじめたために、現代人は混迷しはじめた」(P22)


たしかに考えてみれば、民主主義もおはなし。日本というのもおはなし。
創価学会はある種の臭みのあるおはなしと言えよう。
資本主義経済も、日中友好も、北方領土問題も言ってしまえばおはなしに過ぎない。
我われをときに悩ませ、ときに励ましてくれる家族もおはなしだろう。
そもそも、要となる「私」がおはなしそのものである。
たとえばシナリオ・センターにお金を支払うことで、
「ライターをめざす私」という新しいおはなしを手に入れることができる。
これは現世のおはなしだが、新興宗教で前世や来世のおはなしを買うものもいるだろう。
ライターや作家、漫画家は、おはなしを創る仕事である。

河合隼雄の「おはなし」へのスタンスは近所迷惑を起こさないためにも重要である。

「私が今考えている立場は次のようなことである。
「おはなし」に正誤はない。要はどれが好きかの問題である。
私は『古事記』のはなしが好きであるとか、
場合によっては、好きな話をつくるのもいい。
それは「私」が好きだという意味で、「私」に深く関連する。
しかし、好きなものは他人に押しつけられない。
他人は他人で好きなものがあることを否定できない。
人間のいいところは、好みを共有しなくとも仲良くできることである」(P22)


とはいえ、UFOや盗聴器、殺されそうな私といったおはなしを持つものは、
狂人として精神科医から治療されてしまうのだから厄介である。
世界を変える私というおはなしも現代ならおそらく治療対象になるのだろう。

COMMENT









 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/2546-295780fb