「日本縦断 フーゾクの旅」

「日本縦断 フーゾクの旅」(安田理央/二見書房)絶版

→何年まえだったか、四方だれもいない砂漠で、
ひとり星空を見ながらビールをのんだことがある。
中国・敦煌付近の砂漠だ。
ふつうだったら、なにか悟ったような誤解をするものだが、
わたしはただただつまらないと思った。
砂漠はつまらない。比べて人間のどれほどおもしろいことか。
早く敦煌料理店に戻ってズイさんと酒杯を交わしたいと思ったものである。

こういう感覚で常に生きている。
精神の基盤にあるのが、サブカル的=エロ本的なものなのだ。
すべての権威を嘲笑おうという、すねた視点を捨てることができない。
本書はエロ業界の敏腕ライター、安田理央氏が日本全国のフーゾクを旅した記録。
AV撮影のおりに見聞した日本各地のフーゾクの現状がレポートされる。
読みながら、これは名著だと思った。
女・旅・酒食――3つの魅力がストレートに描かれている。

人間は自分を超えられない。
すなわち、だれも自分以外の人間にはなれない。
ところが、読書をすると、自分ではない人間の実感というものがわかる。
読書の快楽であろう。

日本各地のフーゾクを実地体験した安田理央氏の卓見を引用する。

「つくづく風俗とは、そして性欲とは単純ではないなと思った」(P174)

「僕もこれまで仕事で、色々な相手と対戦してきた。
ニューハーフもいたし、
老女ホテトルで60歳以上の女性を相手にしたこともあった。
今日のおばちゃんのような、すごいデブにだって何度も当たった。
しかし考えてみると、そういった相手だからダメだったというのは少ない。
むしろ他人が聞いたら羨ましがるような美女、
美少女相手の時の方が肝心の時に役立たずということは、何度も経験がある」(P188)


シェイクスピア「マクベス」のセリフ、「きれいは穢(きた)ない、穢ないはきれい」を
安田理央氏はよくよくわかっておられる。
大学の先生などより、このライターさんのほうが、
深いレベルで「マクベス」を理解することだろう。

(おまけ)文中の「敦煌料理店」は忘れがたい幸福な思い出。
以下のリンクのいちばん下に当時のことを書いた記事がございます。
長文ですが、もし暇を持て余していらしたら↓
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