「あいびき」

「あいびき」(ノエル・カワード/沼沢洽治訳/「現代世界演劇15 風俗劇」/白水社)絶版

→戯曲。イギリス産。
カワードは、ラティガン、モームと比されるウェルメイドプレイの劇作家。

体験と読書(鑑賞)はどのような関係にあるのだろうか。
本作は、ともに配偶者および子どものいる男女の「あいびき」を中心に描いている。
不倫どころか結婚の経験(希望も……)さえないから困ってしまう。
果たしてわたしはこの劇作を理解できていないのか。
たとえば不倫体験があれば、この戯曲により深く感動できるのだろうか。
だとしたら、あらゆる作品の評価軸が狂ってしまうように思うのだが。
というのも、コンクール選考委員の人生履歴いかんで評価が変わるわけだから。
むろん、コンクール入賞と落選の理由の八割がたが運であることを知らないわけではない。

生涯、縁のないことを疑似体験できるのも、フィクションの楽しみのひとつである。
人間は限定性を生きている。
わかりやすくいえば、男は女の、女は男の感受性を断じて味わえぬ。
だから、我われは求めるのだろう。芝居を、ドラマを、小説を、ルポを。
このとき、おのれの体験というのは、いったいどう関係していくのか。
体験したことを書く作家がいる(いわゆる私小説家)。
ところが、体験したことを書けない作家もまたいるのである(たとえば山田太一先生!)。

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