ブックオフ亡国論

出版不況が洒落にならないくらい深刻なようである(例によって2ちゃんねる情報)。
なにが悪いのか。
書き手のレベル低下。出版社のモラル喪失。国民の活字離れ。
こういった建前はもうやめませんか。
みんながんばっているのだ。
作家はだれもが必死になって本を書いている。
出版社の編集者はそれを懸命に応援している。
読者はそうして完成した書物を読みたいと待っている。
この構図はむかしから変わらない。

ところがブックオフが登場してしまった。
このため「作者・出版社(編集者)・読者」の美しいトライアングルがめちゃくちゃに――。
なにがいけないかというとブックオフの価格だ。
大勢の人間の苦労によって生み出された書籍がブックオフでは105円で販売されてしまう。
ブックオフは卑怯なのである。
なぜなら、かの企業は書籍の製作にまったくかかわっていない。
そのくせ図々しくも完成品の価値のみネコババしているのだから。

とはいえ、ブックオフの顧客を責めるのは間違いではないか。
ひとたび出版されて間もない定価1500円の書籍をたったの105円で買ってしまった。
この読書家は今後、新刊書店で四桁もする書物を頻繁に買うだろうか。
よほどの富裕層でもない限り、難しいと思うのだが。
我われが享受している資本主義世界とは、なんのことはない、安ければいい世界だ。
ひとり勝ちした資本主義には、
世界における理想や、かく生きるべしという人生論がない。
カネがすべての世界である。
その手段がどうであろうと、本を安く売るからブックオフはもうかるのである。

ブックオフがこのまま発展するのかは疑問だ。
新古書店は、そもそも新刊書籍あっての商売。
このまま出版不況がつづき、新刊もいいかげんなものしか出なくなると、
ドミノ倒しのごとくブックオフも経営が立ち行かなくなるのではないか。
新刊書籍があってこそのブックオフ。
だのに、寄生虫ブックオフは出版社の血を死に至るまで吸い取ろうとする。
しまいには、みんないなくなるだろう。

7月15日ブックオフ新宿靖国通店。

「インド大修時代」(山田和/講談社文庫)絶版

350円だったものの割引券があったので250円。

同日、ブックオフ大久保明治通り店。

「煮え煮えアジアパー伝」(鴨志田穣・西原理恵子/講談社文庫) 105円
「最後のアジアパー伝」(鴨志田穣・西原理恵子/講談社文庫) 105円
「ラ・ロシュフコー箴言集」(二宮フサ/岩波文庫) 350円


失敗をいくつか。
ラ・ロシュフコーを知ったのは山田太一ドラマ「時には一緒に」。
岩波文庫のラ・ロシュフコー「箴言と考察」は品切れだった。
だから、古書店で見つけたら買おうと思っていたのだ。
ところが、この「ラ・ロシュフコー箴言集」は、
山田太一ドラマ放送後に新訳として出版されたもの。
ふつうに新刊書店で買えたのである。
105円ならいざ知れず、わざわざブックオフ半額で買うべきものではなかった。

「アジアパー伝」シリーズは「もっと煮え煮えアジアパー伝」が欠けている。
これを105円でそろえて、ようやく完結となる。
文庫くらい定価で買うべきなのに、ほんとうにごめんなさい。
ブックオフもいけないが、わたしはもっといけませんね。

同日、早稲田の正統的な古書店で買った古本。

「裸者と死者ⅠⅡ」(ノーマン・メイラー/山西英一訳/新潮社)絶版 1000円

いまはだれからも忘れ去られた長編小説。
わたしも敬愛する山田太一先生の推薦図書でなかったら買わなかったと思う。
使命が終ってしまった書籍といえよう。
だが、こういった古書も古本屋があるおかげで読者に流れる。
むかしながらの古本屋とブックオフはまったく役割がちがう。
ブックオフはかつてなら資源ゴミで捨てられていた紙くずをただ同然で引き取り売りに出す。

ブックオフから本を買ってはいけないのだろう。
だが、きみは餓えた乞食がコンビニの廃棄食物をあさるのを悪とまでは言うまい。

8月27日、近所のブックオフ。

「東京横町の酒房」(笹口幸男/講談社)絶版 105円
「無責任のすすめ」(ひろさちや/ソフトバンク新書) 105円
「思考の整理学」(外山滋比古/ちくま文庫) 105円
「篠山紀信 シルクロード[一][二][三]」(集英社文庫)絶版 315円


つまるところ、本を愛するわたしが本を殺しているのかもしれない――。

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