FC2ブログ

「ちょっと愛して…」

「ちょっと愛して…」」(山田太一/「月刊ドラマ」2003年6月号/映人社)

→テレビドラマシナリオ。昭和60年放送作品。単発ドラマ。
もてない男女が烈しい恋愛なんてなにもないまま断念するかのように結婚するまでを描く。
「他にないドラマを創る」が信条の山田太一らしい、ひねくれたドラマである。

加島秀子は37歳、独身である。
派遣社員。デパートの紳士服売場でバリバリ働いている。
ずっと独りのままでいいと思っていた。
ところが、ままらなぬ感情につき動かされ結婚相談所へ足を向けてしまう。

秀子「結婚して幸福な家庭を持ちたいって、そんなんじゃないのよ。
なんか揉(も)めててもいいから、揉める相手が欲しいというか」(P65)


結婚は条件の折り合いである。年齢、年収、初婚か再婚か、子の有無。
秀子に条件が適合する男性が現われる。
41歳、次男、電信技術者、年収250万以上300万未満の大谷光一である。
秀子は光一とホテルの喫茶店で逢う。
初対面からお互いの見てくれにがっかりする男女である。
秀子は交際お断りの連絡を入れる。これで終わりのはずだった。
ある日、紳士服売場に光一がすがたを見せる。光一は言う。
結婚相談所から女性を紹介されると、片っ端から逢いたいと返事を出す。
しかし、だれも逢っちゃくれねえ。どうかな。もう一度、交際できないかな。
秀子は断わる。「私だって、そりゃ、贅沢いえた身じゃないけど、それなりに夢もあるし」
こうしてふたりの交際は終わったはずだった。
秀子は紹介される男性のほとんどに逢いたいと返事を出すが、
断わられてばかりである。さみしい。つい光一に連絡を取る。逢ってみる。
けれども、どうしようもなく性格が合わない。
秀子は西欧の文物を愛している。光一は気取っていると秀子の趣味をバカにする。

ふたりは逢っても喧嘩ばかりしている。
ある日、光一は秀子を自分のアパートに誘う。光一は秀子に言う。
「俺、ほんというと、あんたのこと、本当に好きかどうか、まだよく分らねえ」
寂しくなったものは、こんな風にして世帯を持つのだろうか。
そう口にした光一は秀子を不器用に抱きにかかる。
秀子はキスをされ押し倒されるのをはねつけることができない――。
ふたりは結婚相談所へ婚約の報告におもむく。その帰り道である。

秀子「(立止り)大谷さん」
光一「うん?(と振りかえる)」
秀子「いいのかしらね? 
こんなことで、一緒になって?(と奈落から見上げるような目になってしまう)」
光一「(ゆっくり戻って、秀子の前に立ち)先のことは、分らねえけど、
お互い、ひとり暮しには、結構懲(こ)りとるから、案外、続くんじゃねえか」
秀子「(うなずき)――そう、だといいけど」
光一「腕組めや」
秀子「いいわ」
光一「長えこと、見せつけられて来たんだ。ちっとぐれェは、見せつけてえじゃねえか」
秀子「うん――(と組む)」
光一「フフ(と歩き出す)」
秀子「フフ」(P71)


番組終了の直前、ふたりの新婚生活が明らかになる。
夜半、鍋をぶつけ、座布団をぶつけ、摑(つか)み合いの喧嘩をしている秀子と光一。
かと思えば、昼である。手をつないで、肩をぶつけ合ってやってくる秀子と光一。
その幸せそうな笑顔のストップモーションで――ドラマは終了するのである。

COMMENT









 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/1755-cf54016e