「ハノイの犬、バンコクの象、ガンガーの火、」

「ハノイの犬、バンコクの象、ガンガーの火、」(小林紀晴/幻冬舎文庫)絶版

→小林紀晴の才能について思う。口惜しいが、
「再会」をテーマにしたこのアジア旅行記から才能というほかないものを感じる。
著者の才能は、驚くべき性格の良さに起因しているように思う。
性格の悪いものがいい文章を書くと思っていた。
だが、飛びぬけて性格のよいのもまた、ひとつの武器になりうるのだ。
小林紀晴の文章の特徴はピュアなところである。
純粋というと古めかしくて似合わない。小林紀晴はピュアなのである。
ふつうの人間ならとても恥ずかしくて書けないようなセンチメンタルな文章を綴る。
それがまったく鼻につかないのは随所から感じられる著者の純情ゆえである。
ひねくれたところがまるで感じられないのである。
だれもがアジアで感じるものの、しかし恥ずかしくてとても口には出せないことを、
飾り立てすることなく著者はストレートに表現する。
稀有な作家だと思う。今後、どこまで根性曲がりにならないでいられるか。
友人が極めて多い著者のこと。心配する必要もないのであろう。
およそ旅行記としては最高レベルの、ほんとうに満足できる読書であった。

COMMENT









 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/1745-5a43514a