「カウンセリング」

「カウンセリング」(水島恵一/放送大学教育振興会)

→家族システム論が興味深かった。
これはひとりだけではなく家族全体をカウンセリングしようとする学派。
クライエントは家庭のいかなる事情によって生み出されるか。
本書から引用する。

「症状や問題行動は、たいてい家庭内の均衡が脅かされたり、
それをくつがえすような変化が生じたときか、
あるいはそのような変化が予期されたときに出現する。
ここでは変化とは、家族の一人が家を出る、結婚する、転職する、就学する、
離婚する、青年期になる、中年になる、病気になる、死ぬなどである」(P117)


お気づきのかたもおられるかもしれないが、すべて家族ドラマの事件である。
家族ドラマを動かすものとおなじものが、
クライエント(問題行動、症状)を生み出すということだ。
とすると、シナリオライターは大忙しである。
まず変化を起こし家族の一員を病ます。
かと思えばかの病者を治すのもシナリオライターの仕事。
みずから火をつけておきながらもったいぶって消火するおかしさがドラマ作家にはある。

本書の最終章で治らないクライエントについて述べられている。
人間には限界があるということである。
なんでも治せると思うな。どうにもならないことがあるという戒めだ。
カウンセラーは治らないものにも尊厳を見いだしあたたかく見守る必要があるという。
これは脚本家、小説家が死にゆく作中人物を見やる視線とおなじといえよう。
この場合、(虚構ならぬ現実を扱う)カウンセラーはより骨を折らなければならない。

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