「優駿(上)(下)」

04/06/27 13:20

「優駿(上)(下)」(宮本輝/新潮文庫)*再読

→小説を読むというのはほんとうに楽しいことなのだと改めて実感させられた。
読みやすい文章、時間を忘れさせる物語、魅力的な登場人物――。
この「優駿」は至れり尽せりの感があります。
最初にこの小説を読んだときは圧倒的な感動に押しつぶされたかのようで、
ただ涙にまみれ、「生きよう、生きよう」と随喜の嗚咽をもらすのみだった。
恥ずかしいけどほんとうなんです。

今回の再読では残念ながらそこまでの感動は味わえなかった。
こういう小説を書けるひとは幸せだなぁと
観客席のいちばん後ろから舞台の上を見やる気分。
けっして自分が立つことのない舞台を、羨望の思いで、ため息をつきながら。
たしかにすばらしい舞台(小説)ではあったけど、それは舞台の上だけの話だから。
そう出口に近いいちばん後ろの席でわたしは思った。

ひとつ再読して気づいたことがある。これはネタバレになるから注意して。
宮本輝は最後にオラシオンを勝たせていないこと!
初読のときはまったく気づかなかったけど。
オラシオンは実際は負けているのに「運」のおかげて勝利したことになっている。
やはり宮本輝という作家の宿命を見据える視線には恐ろしいものがある。

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