FC2ブログ

「プロの小説家になる 作家養成塾」

「プロの小説家になる 作家養成塾」(若桜木虔/KKベストセラーズ)

→本書を読んで自分がなぜ小説を書けないのかよくわかった。
この小説作法の売りは、プロ寸前の小説が全文掲載されていること。
上段はプロ一歩手前の小説、下段が若桜木虔のダメだしという構成である。

これまでかなり難解な小説論や文学論にも目を通してきたが、なんのことはない。
小説とは描写なのである。
いかに読者の脳内に人物、風景、せりふ、心理を言葉によってイメージさせるか。
言葉による情報伝達で読み手をもてなすのが小説なのである。
すなわち、描写が小説の命ということだ。
風景描写、服装描写、表情描写、口調描写、心理描写、感覚描写――。
わたしはこの描写がどうしてもできない。不得手である。
だから、書くものが小説らしくならないのである。
目が極端に弱いのが原因だと思う。視覚が劣っている。
ひとと逢っても、どんな服装をしていたかまるで憶えていない。気にしていない。
風景を見ても、からきし見とれるということがない。いきおい記憶にも残らない。
絶景を言葉で描写したいと欲したことはない。
恥ずかしいが、ひとの顔がみなおなじに見えるのである。
芸能人はまったく識別できない。
これはいまから努力してなんとかなる問題だろうか。
先天的な能力が欠けているという気がしてならない。
耳はいいのである。ひとから話を聞いたら、驚くくらい憶えている。
反面、目がてんでダメである。ひとの顔をあまり注意して見ていない。
読者が小説の世界に入るとき、まず重んじるのが顔だと思われる(とくに女性読者は)。
わたしはその顔の描写がぜんぜんできない。
美人とか、美人ではない、といったような、月並みで凡庸な描写しかできない。
どうして書くもの書くものがエッセイになってしまうのか。
原因は描写の欠如であった。そして、わたしはどうにも描写が苦手である。
これはもう小説を書くことを断念すべきなのだろうか。
かんたんなことなのである。小説は描写だ。これに長いこと気がつかなかった――。

小説家志望向けの読書法というのがたいへん参考になった(41ページ)。
・主人公のキャラクター造形の手腕(いかに早く主人公をイメージさせるか)。
・ひとつのシーンをどのくらいの枚数を用いて書いているか。
・場所や日時が変わる場合、シーンの切り替えにどういった工夫をしているか。
・緊張シーンとゆったりシーンの比率、配合(メリハリのつけかた)。
・会話と心理描写の分量、巧拙に注意する。

作家になってからのことも説明されていて納得した。
新人賞を取るためにはオリジナリティあふれる斬新な小説が必要。
けれども、いざプロになったらばワンパターンでも読者はついてきてくれる。
水戸黄門のようなワンパターンを好む読者はかならずいる。
西村京太郎、内田康夫、赤川次郎が長者番付常連なのはこのため。
おなじ理由で高額所得作家は冒険をしないから文学賞とは縁遠い。
作家志望者が勉強として小説を読むならばデビュー作を読んだほうがいい。
プロの作品をつまらないと思うのはいいが、あの退屈はプロだから許されるのである。
いったんプロになったらプロだからと許されることがけっこうある。
だが、新人にたいしては文学賞選者も編集者も読者も非常に手厳しい。
新人賞取得と作家生活の継続はまったく別物と考えてもいい。
――作家の裏側の赤裸々な告白です。

COMMENT

coco URL @
02/23 13:08
. 作家になるためのハウツーもの。くそくらえだ。

そんなものを参考にして書き上げた小説を想像してみてください。
どっかの文学賞なんてとっちゃったらどうします。やった!♪なんて。
上手な文章の書ける小説屋さんになりたいのなら別です。

地べたへねじ伏せられるような、
底なし沼から引っぱりあげられるような、
いつのまに宇宙的意志の前へほうり出されるような、
そういう力をもつ小説は、技法などかっぱの屁です。

冗長な文章と格闘しながらも残りの頁が少なくなるのを惜しむのである。
そっけない描写に乏しい想像力を総動員せねばならずとも面白いのである。

これまでの読書経験です。
Yonda? URL @
02/23 22:02
cocoさんへ. 

たしかにわたしもマニュアルにのっとって書かれた小説など読みたくないです。
最近、年齢のせいかこころざしが低くなって、
ついこんな本に手をだしてしまいました。
おっしゃるとおりなのです。
初心忘れるべからず。大志を抱いていきたいと思います。

だけど、今回のトラブルで安心しました。
てっきりルサンチマンが減退したと思っていたら、
ぜんぜんそんなことはなかった。
強大なルサンチマンの再発見が、今回のトラブルの収穫のひとつです。
Epimbi URL @
03/03 21:41
素人のご意見なのですが、、、. comment素人のご意見なので、あてずっぽうで参考にならないのかもしれないのですが、、、

ご自分の眼がみえないことを嘆くよりも、
眼に映った世界を忠実に表現できることが重要なの
ではないでしょうか?ルノアールの絵とかピンボケで
すが、それがルノアールの見た世界なのです。

だから、自分に見えた世界と他人の見えた世界の差に
早く気がつき、自分なりの世界の見え方の癖を利用
して、自分の世界が構築できることが大切なのでは
ないでしょうか。スミマセン。何もわかっていないのに
えらそうな口ぶりですね。

ちなみに私は植物が好きなので、道端に生えている
草は名もない雑草じゃないことが多いです。といっても
田舎に行けばまた別の話なのですが、、、
一方、走っているクルマのメーカーはさっぱりです。

そんなわけで、眼に映っている世界も詳細な部分と
大雑把な部分があり、また年を経たり、きっかけが
あって気づくことが増えたりしながら、変化していき、
それも面白さのひとつの要素となりえましょう。








 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/1532-d34424a8