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「おいしい中国屋台」

「おいしい中国屋台」(浜井幸子/情報センター出版局)絶版

→わたしはペシミストの自殺志願者なのだが(笑)、
それでも人生に楽しいことはいくつかあると思っている。
そのひとつが異国の屋台である。
屋台限定というわけではなく、
地元の人間が集まる店といったほうが正しいのかもしれない。
言葉もおぼつかない異国で、
にもかかわらず、勇気をだしてにぎわっている店(屋台)へ入る。
注文方法もわからないから、近くのひとの食べているものを指さす。
このときの緊張感がたまらなく楽しい。
人生にこんな楽しいことがほかにあるのかと思うほどである。
店のひとも、こちらが外国人だと知り、いささかの緊張が走る。

世界各地、ほとんどのところで酒はのまれている。
危険なのはわかっているが、あえて地酒にチャレンジする。
とはいえこれも、あれをくれとのんでいるひとを指さすしかない。
名前も知らぬ大衆食を食べながらあやしげな地酒をのむのがどれほど楽しいか。
そのうち地元の飲兵衛から声がかかる。
片言の現地語と英語でコミュニケーションをはかる。
かれとは今日ここに来なければ逢わなかったことを思うと、
この世の神秘に打たれる思いもする。
けれども、酒をのんでいるうちに、そんなむずかしいことはどうでもよくなる。
酔いの昂揚から外国人と意思の疎通ができたような錯覚にとらわれる。
さかずきをかさねる。人間が、生きていることが、とても愛おしくなる。
世の中にこんなぜいたくな酒とつまみはないのではないかと思うのはこのときである。

本書「おいしい中国屋台」の著者、浜井幸子さんは、酒こそのまないものの、
いま書いているような旅の愉楽を、屋台の歓喜を、解明せんとした偉大な冒険家である。

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