楽山から成都へはバスで3時間。バスは発車すると、すぐさま高速道路へ。
極めて快適なバス移動であった。
さて、成都へ到着すると客引きが群がってくる。
最後まで食らいついてきたのはおばさんタクシー。
おそらく非公認のタクシーと思われる。白タクとよばれるもの。
初めての土地で不安な旅行者を食い物にするハイエナ。
とまで書いたらかわいそうかな。
まあ、正規のタクシー料金にちょい上乗せするくらいのかわいいものである。
たしかに、なのである。ここがどこだかわからない。
ガイドブックの地図には掲載されていないバスターミナルのようである。
おばさんは市内まで60元だの、50元にまけるだのほざいている。

中国旅行の秘訣を書く。駅を目指せ、である。
どこの観光地でも駅近くに向かうのがよろしい。
なぜなら駅近くにはかならずホテルが複数ある。むろん競争になる。
ことの必然として、宿泊料金はさがる。
もうひとつは、駅周辺は安い食堂が多いということがある。
駅とは移動する無数の人間が交差する場所である。人間、腹がへればメシを食う。
食うやつがいるところには、かならず料理するものが現われる。
宿とメシの利便性を説いたが、駅付近をおすすめする理由はこれだけではない。
中国での長距離移動は列車がメインとなる。
となると、切符を買うにつけても、乗車する都合においても、
駅近くに宿を取るのが最適ということになる。
さらにだ。駅というのは町の中心である。
市内を移動するバスも、駅前を通過するものが多くなる。
市内観光にも便利なのである(タクシーで観光する金満旅行者はこの例にあらず)。
まだあるのである。
中国では駅の近くにかならずといってよいほどインターネットカフェがある。
それも24時間営業のところがほとんどである。
列車待ちで時間をつぶすときなど重宝する。
かようなしだいで中国長期旅行のポイントとして駅近くの宿泊を推奨する。
これから中国を旅行しようと考えているかたはぜひ参考にしてください。

成都でも駅前に宿を取ろうと思った。目指すは駅である。
白タクおばちゃんは、ウソばかり言う。駅はここからとんでもなく離れている。
駅へ行く公共のバスはない。50元。特別価格。これはぜったい安い。
わたしの腕をとって強引にタクシーへ連れて行こうとするのである。
からだをさわられるのがひどく嫌いである。消えろ、とすごむ。
体格だな。男ならからだは大きいほうがいい。舐められたら終わりである。
落ち着いて周囲を見まわすと、ほう、あそこにありましたか。バス停留所発見である。
バスの乗車方法はわかっている。駅に行くのはどれかな。
日本人だと漢字がわかるからその気になればバスくらいは乗れるのである。
これが白人だったらまず無理だろう。さっきのおばさんと値段交渉するくらいしかない。
ちょうどいま停まっているバスが駅へ向かうようである。
これだとわずか2元(30円)である。48元も節約したことになる。

バスのなかで車掌さんが親切に教えてくれる。
終点が駅だから、このまま乗っていればそれでいいよ(筆談)。
中国をもっとも印象づけるのは駅である。どの駅も実に堂々としている。
見ばえがする。その下をアリのようにうごめく中国人民――。
中国といったらまずこの光景が思い浮かぶ。
無数のアリにまみれ駅周辺をふらふらする。待っているのである。
ほい、来ましたよ。ホテルの客引きである。
日本の繁華街で客引きについていくのはバカだが中国ではそうでもないのだ。
かえって、安く宿泊することもできる。
というのも、客引きをだすくらい商売熱心なのである。
薄利多売をねらっているのかもしれない。
連れて行かれたのは駅のちょい裏手。招待所といったようなものではない。
立派なホテルである。これはさすがにわたしには不釣合いかなと思う。
いかにも高そうなホテルなのである。
しかし、待てよとも思う。楽山のホテルで、チャイナ娘の値引交渉を見ている。
ここでもあれができるのではないか。
フロントのある立派なホテルである。一泊260元とはりだされている。
これはダメだと帰ろうとすると、いくらなら泊まるんだとフロントの青年が聞いてくる。
メモに書く。一泊百元(1500円)。三泊するから三百元。これでどーだい?
あっさりOKが出る。あれ、中国のホテルって、いったい?
この疑問は旅の終わりまでついてまわることになる。
フロントのかれはなかなかの好青年。かたことの日本語を話す。立派、立派とほめる。

いいホテルに泊まるとやはり気分がいい。いいホテルとは――。
きれいなホテルである。清潔なこと。窓から見える景色がよければなおよし。
シャワーですぐにお湯が出ることも重要なポイント。
ここは実にいいホテルである。駅前で立地もいい。
ほんと1500円でいいのかと思ってしまう。
「地球の歩き方」掲載のホテルなど、みんな最低400元はする。
ガイドブックと現実のこの相違はどこから生じるのだろうか。
寝床が決まったらつぎは列車の切符である。
いや、書く順番を間違えた。最初に列車の切符を買ったのである。
それからホテルを決めたのだった。
拍子抜けするほどあっさり3日後の西安行き寝台チケットが取れたので、
記憶が薄れていたのかもしれない。

これでもう今日はなにもすることがない。となったら酒である。
まず寝酒用に軽いつまみと冷えていないビールを近くの売店で購入。
信じられないほどへたくそな英語をつかう女の子がかわいかった。
顔に吹出物ができていたけれども、あれは中華料理のせいなんだろうな。
わたしもおかしなニキビが顔にできていた(すぐに治ったが)。
中国の食堂はひどい油をがんがんつかうせいだろう。お肌によくないのだ。
って、どうでもいいですね。
10以上の食堂に聞いて回って、ようやく1軒冷たいビールをだすところを発見。
3元(45円)で冷たいビールがのめるとうれしい。
異国で初めての食堂へ入ることほど、刺激的で楽しいことはそうはありませんよ。
楽しいんだ。これが旅の楽しみの半分以上をしめるのかもしれない。
メニューを渡される。中国語である。漢字がずらり。
さて、これはなにかなと恐るおそる注文する。どきどきですわ。
油っこい中華料理でビールとあわないものなど皆無といってもよい。
そうそう、このときは覚えたての中国語でさっぱりしたものをオーダー(中日会話事典)。
出てきたのはキュウリと豚肉の炒めもの。
うーん、やっぱり中華料理はぎどぎどしてからいもののほうがうまいかも。
なんて思う。この店には3日間通いつめることになる。冷たいビールは偉大である。

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