「ドキュメント ゆきゆきて、神軍」「全身小説家」

04/04/13 09:27

「ドキュメント ゆきゆきて、神軍」(原一男/教養文庫)*再読

→同名映画の制作ノートと採録シナリオ。
これを読んだらあの映画が何倍もおもしろくなると思う。
えーと、「ゆきゆきて、神軍」というドキュメンタリー映画の主人公は奥崎謙三。
奥崎謙三は戦争中、自らもいたニューギニアでの不法な部下の処刑、人肉食を追求する。
映画のラストには奥崎謙三が元・上官の息子に発砲して重傷を負わせたという新聞記事。

原一男さんから影響を受けたのは二点。
まず、ひとつの表現をしようと思ったら10年かけるつもりでやるということ。
もうひとつは、表現をするためなら何をやってもいいということ。
この「ゆきゆきて、神軍」は撮影をはじめてから完成するまで5年だってさ。
それと、そう。この映画の撮影中に奥崎謙三から元・上官を殺すシーンを
撮ってもらえないかと原一男は頼まれたという。即答はできなかったらしいけど、
それからずっと撮るべきか悩みつづける原一男さん……おいおい!
もっとやばいのはこう述懐する原一男。

「奥崎さんもアホだよな。オレに撮らせたかったら、
オレに話なんかしないで、現場へ行っていきなり殺っちゃえばいいんだよ。
そうすりゃあオレは、結果として無我夢中で撮ってしまうと思うよ」(55ページ)


「全身小説家」(原一男/キネマ旬報社)*再読

→同名映画の制作ノートと採録シナリオ。
このドキュメンタリー映画の主人公は文学者・井上光晴。ガンで死ぬまでを描く。
あといかに経歴が虚偽だったかを入念なインタビューで暴いたり。
井上光晴関係者でこの映画を見て愉快な気分になったものはいないのでは……。
最後の撮影なんて修羅場だったろうと想像できる。
原さんとしては、死をまえにした井上光晴の姿を撮影したい。
でも家族としては、そんな寿命を縮める映画撮影などしてほしくないのは当然。
そんな中にキャメラを持って行くんだから、並みの神経じゃできません。
いや、しかし、表現のためだったら、
表現とはそういうもんだろうとつぶやく鬼才・原一男は是か非か。

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