たぶん喧嘩塾のようなものを経営するのがいちばん儲かるのだろうな。
うちの教室に来ればかならず喧嘩に勝てると宣伝して集客する。
「だれでも強くなれる。喧嘩に絶対に勝つ方法がある」
どう教えたらいいか。なーに、かんたんだ。
基本がたいせつだと強調して、
殴り方、蹴り方からメンチの切り方まで適当に指導すればいい。
生徒のなかにはもとから強いやつがかならずいるから、
そいつにスポットライトを浴びせて、うちのおかげで強くなったと厚顔に主張しよう。
従わない生徒がいたら、「謙虚になれ」と怒鳴りつけてやれ。
講師はときおりむかしの武勇伝を語って、さも自分は最強であるかのように装うべし。
「おれは若いころはやんちゃしていて、ゾクをひとりでつぶしたこともある」とかさ(笑)。

もし生徒からクレームが来たらどうするか。
「教わったとおりにしましたが喧嘩に負けちゃいました……」
喧嘩の勝敗は持って生まれた体格や性格(度胸)、
そのときの運が強く関係するから常勝のものはいないはずである。
どうして先生の指導どおりに喧嘩したのに負けてしまったのだろう?
こういう生徒は叱りつけるにかぎる。
あんたは努力が足りないんだ。努力が足らないから負けたんだ。
うちでは夏に合宿をやっているから、かならず参加しなさい。
お金がもったいない? 
自己投資を惜しんでいるようだと、いつまで経っても強くなれないぞ。
もっと努力をしろ。講師の教えに従え。
理解しろ。負けるのは努力が足らないからだ。もっと努力せよ(=金を払え)。

長く経営していたら講師に喧嘩の実践指導を求めてくる生徒も出てくるはずだ。
「先生、ぼくと喧嘩してみてください」
こういう不穏な注文は断固として受けつけないのがよろしい。
「うちの教室ではそういうことはやっていない!」
威勢よく怒鳴りつけるのがポイントだ。できるだけ大声で怒鳴ろう。
こうすればよほどタフな生徒以外は震えあがるはずだ。
こういう教室に来る生徒なんざバカばっかりだから、
怒鳴りつけてやれば「この先生は偉いんだ」と向こうで勝手に勘違いしてくれる。
間違っても生徒から売られた喧嘩を買ってはいけない。
だって、負けちゃうかもしれないわけだから(笑)。
生徒は喧嘩する相手ではなく、金をしぼりとる対象であることを忘れてはならない。

それでもごくたまにおかしな生徒が来ることがある。
「あれ? 本当は先生、弱いのではないか?」
と気づかれてしまったら、どうしたらいいか。
路上でいきなり喧嘩を仕掛けてこられたら負けてしまう。
さあ、どうしたらいいのだろう? 大人はガキをどうこらしめるべきか?
なるべく大人数の仲間を集めて不意打ちしてやればいいのである。
たとえば月謝を払いに来たときにでも、
あらかじめ仲間を集めておいて「おまえは生意気だ」と集団でボコボコにしてやれ。
このときつゆ温情をかけてはいけない。
一生立ち直れないほど痛めつけてから追い出す。
相手をカタワにするくらいの気持を持とう。
我われは強いのだということをバカな生徒に思い知らせてやれ。

こうしたら経営は安定だ。
従順に金を払い込んでくれる生徒には温容な表情で接する。
重要なのは、「ありがとう」なんて口が裂けてもいわないことだ。
教えてやってるんだ、という強気の姿勢を崩してはならない。
人間というものは、偉そうにしているものを崇め奉るものと知れ。
どうしたら偉ぶれるか? ひんぱんに怒鳴るがよろしい。
人は怒鳴られたら家畜のように従うものなのだ。
絶対に生徒を甘やかしてはならない。それから夢を与えてやれ。
弱い人間ほど非現実的な夢に食いつくものである。
夢を持とう! 喧嘩に強くなったら女にもてるぞ! 
夢を持て。努力せよ。金を払え。先生を尊敬しろ。

――このビジネスモデルは以下の偉人たちを参考にしました。
格闘技大会主催者で元プロレスラー(ガチンコ経験ゼロ!)の前田日明氏。
麻雀道場の総裁で「20年間無敗」の伝説を持つ雀鬼の桜井章一氏。
ナンパマニュアル本「ロビンの恋愛商材」作者で元県立越ケ谷高校教師の某先生。
株式会社シナリオ・センター社長で「今日からシナリオを書くという生き方」作者の小林幸恵氏。