「壁を破る言葉」(岡本太郎/イースト・プレス)

→もうヨレヨレ。あんま人には言えないけれど、ほんとはこちらボロボロ。
岡本太郎の言葉を入れても丸一日、もたないのだから。
大学生なら1週間、新社会人なら数日はカンフル効果のある岡本太郎の言葉。
四捨五入すると40になるくたびれたオッサンにはダメダメ。
権力者が目の前に現われたら、
土下座して靴の汚れを舌でお取りして差し上げたいくらいヘナヘナ。
繰り返しになるけれど、いまのおれ、ヨレヨレでボロボロでヘナヘナ。
バリバリになんてとてもなれない。

「すらすらといくらでも溢れ出てきて、
無限につくれるような気がするときもある。
壁にとじこめられて、ニッチもサッチもいかない、
悩めば悩むほどいきづまってしまう、絶望の季節もある。
そういうとき、どうするか。焦らない。
自分と向き合うチャンスだ、と思ってじっくり腰をすえて、
自分はほんとうに何がしたいのか、見極めることだね」(P42)

「絵が描けなくたって、いいじゃないか。
音楽を作らなくたって、死ぬわけじゃない。
ぼくだってパリにいって三年間、絵が描けなかった。
そのつらさは、骨身にしみている。
だけど、そこで自分をごまかして、適当なことをやってしまったら、おしまいだ」(P43)


「ウソつきは成功のはじまり」(内藤誼人/徳間書店)

→ブックオフの105円棚で久々にぶっ飛んだ本を見つけてしまった。
山ほど出ている過労死寸前のビジネスマンをだますための成功本だが、
本書はそのなかでも絶妙な味わいを持っているのではないか。
副題がなによりすばらしい。「他人をだますならまず自分をだませ」――。
大多数の成功本の書き手とは異なり、著者は教えを実践しているのがよろしい。
教えとはしつこいが、「他人をだますならまず自分をだませ」――。
著者は自分のことを心理学者と思っているようだ。
巻末のプロフィールでもそうなっている。
この本のなかでも「私は心理学者なので」と誇らしげに書いている。
ところが、著者はとある私大の社会学研究科が最終学歴。
いったいどこで心理学者になったのだろう?
さらに著者はただの心理学者ではないのである。
「ビジネス心理学では、他の追随を許さない圧倒的な巨人として知られる」(巻末)。
だれが著者を「ビジネス心理学の巨人」と称しているのであろう。
ほかならぬ内藤誼人先生ご自身がご自分を「巨人」とほめあげているのである。
まさにこれは「他人をだますならまず自分をだませ」の果敢なチャレンジ。
こうまで壮大なハッタリを使える度胸には感心した。

巻末の参考文献一覧も最高に笑える。
安手の自己啓発書を、さも学問ぶって羅列しているのである。
アメリカの成功ビジネス本は、
しっかり横文字で記載して権威を装うあこぎな手法も素敵だ。
「他人をだますならまず自分をだませ」を本気で実践している著者は本物ではないか。
本物の……これ以上は無駄口をたたかないでおこう。
成功するために必要なのは、「他人をだますならまず自分をだませ」――。
わたしはこの人を成功者だとは思わないが、本人がそう信じているのだから仕方ない。
これはもしかしたら最高の成功ビジネス本かもしれない。
ここにはなにかしら真実のことが書かれているような気がする。
ならば敬意を表して本書から少し引用しておこう。

「ゴールドスタインという説得研究家は、忙しそうにすればするほど、
その人の“希少価値”が高まるというアドバイスをしている。
実際、弁護士などは、事務所に電話がかかってきても、
なかなかコールに応じないことで、
自分の売れっ子ぶりをアピールする作戦を取っているという」(P20)


こう主張した舌の根も乾かぬうちに――。

「オランダのアムステルダム大学の心理学者マイケル・ハンドグラフ博士は、
弱い人間ほど、強い人間に比べて、他人からの援助を受けやすい
ということを確認している。
私たちは、弱者には、助けの手を差し伸べたくなるのだ。
「仕事ができる」ような顔をしていると、
だれもあなたを助けてくれなくなる」(P68)


「忙しいふり(仕事ができるふり)をせよ」と言った直後に、
このビジネス心理学の巨人は「仕事ができないふりをせよ」と説く。
それにさ、あんまり大声では言えないけれど、ゴールドスタインってだれ?
肩書の説得研究家って、読者を笑わせようとしているのかしら。
マイケル・ハンドグラフなんて人も知らないよ。
もしかしたらこの人たちも著者と同類の自称心理学者なのだろうか。
とはいえ、この人は著書百冊を誇る人気作家なんでしょう。
たしかに「他人をだますならまず自分をだませ」の教えは偉大である。
実践できるかはちょっと自信がない。しかし、名著であった。星五つ。