いまあたまがぐらぐらしている。いつ酔いつぶれるかわからない。
きのう購入した白酒(ばいじう)をさっそくのんだのである。
準備にぬかりはなかった。麻婆茄子を作った。それも本場ふうにである。
いや、これが本場の味かどうかはわからない。
かつて旅した中国でわたしは安食堂しか行っていないのだから。
油を多く入れ、辛くしたら、記憶している味に近づく。
個人的な感想だがニンニクを多めに入れたほうが、底辺労働者向けの味になると思う。
こういう中華料理をお惣菜として(日本の)スーパーやデパ地下で買うことはできない。
なぜならそういったところの中華惣菜はおいしいからである。
日本人の口にあわせている。

ならば自作するほかないではないか。
フライパンを左右する火力は不十分かもしれないが、とりあえず完成する。
麻婆茄子のつもり。味見をする。
どこで売られている中華惣菜よりも、わたしが現地で食べた味に近い。
おまけに卵を入れるだけでできあがる、インスタントのふかひれスープも作る。
なぜなら中国人は食事のとき、かならずスープを注文するからである。
人民はスープをつまみにビールや白酒をのむのだ。

準備は万端。激辛かつ低俗な味の麻婆茄子を口にふくむ。
油っこい。辛い。いかにもいやしい味である。白酒をおちょこに入れ、一気にのみほす。
死ぬかと思う。なんせアルコール度56の酒である。
ちなみにアルコール度。ウォッカ、ウイスキーで40。泡盛で30。
焼酎で25。ワインで15。日本酒で13。ビールで5。
白酒の56度がどれだけすごいかわかってもらえるはずである。
味わう酒ではない。無理やりのみこむ酒である。のみこんだ瞬間、飛び上がりたくなる。
背筋が燃えるような、いや、背筋がこおりつくような味。
全身が発火するような、氷結するような味の酒である。
死ぬかと思うくらいである。このとき酒のみは強烈に(死ならぬ)生を意識する。
酒の醍醐味、ここにありだ。中国人は酒を知っていると感嘆する。

ふかひれスープで荒れた口内を安心させる。
また激辛の麻婆茄子を投入する。味覚よ消えてしまえと白酒を流し込む。
うげえと思う。死ぬんじゃないかと疑う。生きていると歓喜する。
ひとつの酒ののみかたである。ある種の中国人の酒ののみかたである。
いまわたしはそういった酒をのんでいます。