くだらないことを書いてみよう。
ほんらいは有名人しか書くことを許されないような生活の些事(さじ)である。
無名のわたしがご大層にみなさまのお目を汚すことを申し訳なく思っている。

「だから、安いのはいらないんだ。高いのがほしいと何度言ったらわかる?」
これはベトナム、ハノイの孔子廟で聞いた言葉。
かの地は観光名所である。
日本人の団体さんが多数いらっしゃる。
土産物屋でおっさんが日本語で怒っているのである。
安いのはいらない。高いのをくれ!
見ると、箸を買いたいようである。
上司へのお土産にするのかもしれない。
ベトナムのこういう店では、どこも通常、金額がついていない。
店員が客の顔を見て値段を決めるのである。
ことベトナムは外国人からぼったくるので有名な国。
その国で高いものをくれとは――。

おなじ日本人として気持はわかるのである。
他人にプレゼントするならいいものを差し上げたい。
高いものはいいものと考えるのは日本人として通常。
だから、高いものをくれとなる。
ベトナム人にはまったく理解できない考えかたのはずである。
そもそも、そうとうぼったくった値段を日本人観光客には言う。
だのに、かの日本人はその商品を「安いから」いやだというのである。
ならもっと低質なものを気が狂ったような価格で売ろうと考えるのではないか。
彼我(ひが)の国民性のちがいを思い知った経験である。

安いのではダメだ。高いものを買わなければ!
まさかビンボー人のわたしがおなじような願望をもつにいたるとは。
今日のことである。近所のセレブ御用達、高級スーパー。
近所といっても、けっこう離れているので利用することは少ない。
時間があったときに閉店間際の半額惣菜をごくたまに買うくらいである。
こんかい引越をすることになった。
困ったことが。この上流専用スーパーのポイント(カード)がたまっている。
これまでもちょいちょい使ったが、今日の段階で800円も余っている。
引越は数日後。この800円を今日つかうほかない。

店内をあてどなく何度も巡回した。
なにを買えばいいかわからないのである。
この時間は惣菜も半額にはなっていない。
買いたいものがないのである。どれも高すぎる。
いつも行くスーパーの2倍は当たり前なのだから。こわくて買えやしない。
しかし、なにか買わねばカネ(ポイント)をどぶに捨てることになる。
思い切って買ったのが、サーモンの刺身。800円。
マグロのトロくらい買えというご意見もあろうが、2000円近くするのである。
サーモンの刺身が好きというのは、たぶん食通から見たらとても恥ずかしい。
わかりやすい味だからである。あぶらっこくて子どもにも好まれる単純な味。
繊細な味覚を必要とする魚介類ではない。
だけどね、好きなものは好きなの!
最高級のサーモン刺身。レジを通すとき手の震えを隠すことができなかった。
おそるおそる包丁を入れると6切れ。1切れが100円ではきかない。
待てよ、おい! このひと口で本が買えてしまうのか(ブックオフ!)。
いつも食べているサーモンは高くても400円くらいのものである。
いかにしてこいつを食らうか。
目を閉じる。高級料亭にいるイメージをする。
ぱくり。思い込みがたいせつだ。いま高いものを食べている――。

サーモンは泥臭いよな。
高級品だとかえってあぶらのレベルがわかってしまう。サーモンの限界。
サーモンは安くて、あの味くらいがちょうどいい。
高いものは嫌味(いやみ)なもんだ。
サーモンのぶんざいでお高くとまるなよ!
いくら素性をごまかして代議士夫人になろうが売春婦は売春婦だぞ。
わたしの舌のくだした判断である。
とことん上流にはなれていない、わが感覚器官よ。
ベトナムに話を戻す。
このビンボー人だったら。
安い箸を、もっと安くしろと値切る。それを上司にベトナム最高級の箸だと贈る。
書くまいと決めている時事ネタを。
牛肉コロッケが騒がれている。いいんじゃないかなと思う。
中身が豚肉だって牛肉だと思えば、うまくも感じるものである。
よくやったと思えど、関係者を非難する気にはなれない。
深窓の令嬢だと思って結婚したら、AV出演の過去がわかったので離縁した。
あまりほめられた話ではないと思うがどうでしょう。
賛同を得られないことはわかっています。先に謝罪しておく。ごめんなさい。