人間の感想なんてあてにならないもので、
どんな意味不明の文章でも著名な学者が書いていたら平伏し、
どれほどの名文でも無名の書き手のものなら見下し、
たとえば還暦を過ぎた老人が官能的な文章を書いたらキモいと笑い、
おなじものを女子高生が書いたと知ったらみずみずしい感性だと萌えるのだから、
人間は愚かなものと自嘲するほかなく、
かといってたいがいのひとがこの種の偏見をもとに生きているわけで、
よほどの高僧でもないかぎり真相など見破れるものではないという、
このどうしようもない現実は、
いくら般若心経を唱えても「色」ばかりで、
「空」など見えるものかと厭世的になる気持はわからなくもないが、
「色」ばかりでなにが悪いかとむしろ「色」を愉(たの)しむ気概さえあれば、
いまを生きるのもなかなか悪くないことなのかもしれない。