作家――。
家を作る。
作家はことばどおりの存在ではないか。
家を作るのが作家。
モデルハウス全盛の現代。
どの家もおなじ作りになる。
新興住宅地を歩くと、奇妙な感覚に襲われると聞いたことがある。
作家は、なにものかを作る人間と思われがち。
実のところ、壊す人間でもある。
一軒建てればいいというわけではない。
建設と破壊を繰り返すのが作家。
書く。家を作る。完成したら、それを破壊する。
おなじ場所にまたちがう家を作る。
これが作家ではないか。
とすると、肝腎なのは土台。
土台いかんである。
建てて壊す。この更地から、つぎに、いかなる建物を建設するか。
土台がしっかりしていないといけない。
同一の土台から、さまざまな家を作り、客を満足させる。
かの人間こそ、真の作家だと思っている。
プレハブ小屋をひとつ建てるのはだれにでもできるのだ。
重要なのは土台。
プロの建築家(作家)が、土台うんぬんということほど恥ずかしいものはない。
プロなら土台くらい把握しておくべきである。
まだ土台を作っている段階である。
日本文学。海外文学。内外の古典。世界各地の宗教教典。社会科学。自然科学。
どれを土台というのかはわからない。
ただ読みたいと思う。法華経を。論語を。現代思想を。イスラム教を。ヒンドゥー教を。
ほかにもまだまだある。
いざ作家になってから、あわてて土台を勉強するのは、いかにも恥ずかしい。
こんな批判があるかもしれない。
そんなことをいっていると、いつまで経っても家を作れないのではないか。
甘んじて受ける。そのとおりだと思う。
だが、それでも、と反抗する。わたしは土台を重視したいのだ。