05/03/20 14:33:07

「原色 小倉百人一首」(鈴木日出男・山ロ慎一・依田泰/文英堂)

→百人一首に今まで興味を持ったことは一度もなかった。
恥ずかしながら、百人の歌人の秀歌をそれぞれ1首集めたから
百人一首ということすら知らなかったくらいで。

まさに本屋&出版社の営業に買わされたというか。
新宿紀伊国屋書店で平積みになっていて、「たったの560円」というポップが。
はい、ええ、それに釣られて買ってしまいました。
こんなもん2、3時間で読み終わると思っていたのが甘かった。
一般書じゃない、学習参考書なんです、きれいな風景写真にまんまとだまされた。

先日、書店で日本古典コーナーをのぞいて、大量に百人一首関連本があるのに驚いた。
だけど、どの本もまず歌をあげてその横に「歌意」、
それからエッセイを追加という感じなのです。
この「原色 小倉百人一首」のように品詞分解(!)しているのは一冊もなかった。
つまり一般書は、歌がなぜその意味になるかを逃げているわけ。
比して、この本ではそこに徹底的にこだわっているわけで。
「已然形+ば=確定条件」や「名詞+に、で続く場合=理由」とか、はあ(ため息)。

とても2、3時間で読了できるはずもなく、はい、毎日少しずつ学習しました。
でも、年なのでしょう。前の日に勉強した歌を読み返しても忘れてるんだ……。
だから、また品詞分解と単語の意味を確認して――。
いい年して何やってんだかと思いつつ(「つつ」は「反復」とか!)。
昨日は百首連続して音読した。
それでも、まあ、ようやく百人一首の世界になじんだかなという程度。
おもしろいのかって? わかりません。ただ負けたくないと……。
まだお勉強は続ける(こうなったらぜんぶ覚えてやる!)けど、
このへんでひとまず読了報告を。
05/03/20 13:31:13

「日本古典入門」(池田亀鑑/講談社学術文庫)絶版

→良書。わずか130ページの本ながら、実に内容が豊富。
そして嬉しいのが「入門」という名にふさわしい平明な叙述。
これはそこらの大学教授にできる仕事ではありません。
どうしても内容を濃くすると難解になり、
反対にわかりやすくしようとすると中身が薄っぺらいものになってしまうもの。

池田博士、天晴れですぞ!

この本のすごいところは読んでいておもしろいこと、言葉がきれいなこと。
何より秀逸なのは、読者に原典を読みたいと思わせるところ。
併読していた国語便覧とは大違い。あれは原文を読む気をいちじるしくそぐ。
この本の最初の出版は昭和27年。
日本の古典を21選び、内容を、その味わい方も含めて紹介する。

著者は東大教授。
でも教授職につくまえ、
生活費&研究費のために偽名で娯楽小説を書き飛ばしていたとのこと。
その道ではかなりの流行作家になっていたらしい。
これで納得。なぜこの本がこうもおもしろく、かつわかりやすいのか。
読了した3日後、すぐに再読しました。
こんなことをした本は初めてです。
小著ながら十分に再読にたえる深みを持っていると改めて敬服しました。
05/03/06 14:51:29

「ヒンドゥー教巡礼」(立川武蔵/集英社新書)

→新刊。この本をまえにしてため息。
読みたくないなぁ。買わなきゃよかった。
著者名を見てください。前述の哲学オヤジですよ……。
いやいや半ば義務のような感覚でページを開くと、

おお!

文体がくだけていてよろしい。読みやすい。
「日本仏教の思想」を書いてから
この本を執筆するまでの10年間に何があったのでしょう。
世界構造はどーたらとあれだけわけのわからんことを語っていたオッサンが、
この本ではオカルトに走っている。
病気は、邪悪なものに憑依された結果である(西洋医学否定)、
ヨーガは効くぞい(東洋思想礼賛)、うんぬん。
あの立川さんがかわいらしいおじいさんになっていた!

本もなかなか悪くなかった。払った金額分は、まあ、元が取れたと思う。
内容は、インド旅行エッセイとヒンドゥー教紹介のミックスグルメ。
あー、ここわたしも行った、とひとりはしゃいでみたり。
懐かしいなヒンドゥーの神々。
インドに行くまえ詰め込みですんごい勉強しました。
でも実際に行ってみたら、とにかく暑くてね、どうでもよくなった。
そんなこんなのインドの記憶と、
かつて仕入れた知識がないまぜになってかなりよろしい読後感。
このあとインドを思い出しながら、お土産のインドウイスキーで頭をほぐしました。
あ、でも、この本、万人向けではないかもしれません。
ヒンドゥー教の基礎知識が入ってないとちんぷんかんぷんでは。
05/03/06 13:53:50

「日本仏教の思想―受容と変容の千五百年史」(立川武蔵/講談社現代新書)

→覚えていますか。以前書いた1983年東京大学日本史試験問題。

「なぜ平安末、鎌倉という時代にのみ、すぐれた宗教家が輩出したのか。
ほかの時代ではなく、どうしてこの時代にこのような現象が起こったのか。
歴史の流れを総合的に考え、自由な立場から各自の見解を240〜390字で述べよ」


いちおう答えを書きました。だけど、自信がない。
というわけで、読んだのがこれ。
……が、失敗。これ歴史本じゃなくて思想(哲学)本だった。
つまり歴史ではなく仏教思想のほうにウェートを置いている。
歴史事項はさらっと教科書レベル。仏教思想考察はピンセットで隅々まで。
思想(哲学)オンチだから、この本はよくわかんなかった。
著者いわく、仏教に本来備わっていた世界構造の認識が日本ではうまく浸透しなかった。
その最大の転機となったのは、例の鎌倉新仏教。
あそこで難解な世界構造認識をすぱっと切り落とした形で民衆に布教してしまった。
そう指摘した上で、オレ(著者)はその世界構造認識論をわかっている。
どーだ、すごいだろう、という本だと思う、たぶん(笑)。

世界構造認識論というのは、うーん、たとえばここに「赤い花」がある。
この花の存在は何層ものレベルで論じることができる。
赤という性質、においという性質、手触りはどうか……。
よくわかんないでしょう。
とーぜん。だって書いてる本人がわかってないんだから。ごめんなさい。

「図解雑学 仏教」をさらっと読み直す。
図解雑学シリーズのいいところは左ページが文章、
右ページが絵・図になっているところ。復習がしやすい。
すなわち右ページの絵・図だけぱらぱら見て、あいまいなところは文章で確認。
そういうことができる。
ちなみに前回の東大問題答案はこれを参考にして作成しました。
05/03/06 13:19:21

「写楽考」(矢代静一/「矢代静一名作集」白水社)絶版

→戯曲。舞台は江戸時代。
東洲斎写楽。聞いたことがないでもないが、えーと。
取り出すは日本史資料集。巻末の索引で調べてみる。
ほうほう、浮世絵ですか。
浮世絵はどこが良いのかてんでわからぬが、戯曲のほうを読んでみよう。

読売文学賞受賞作品。
この読売文学賞の戯曲部門はかなり参考にしている。
この賞を受賞した「龍を撫でた男」(福田恆存)「オイディプス昇天」(山崎正和)、
どちらもとびきりの絶品だったから。

しかし、この「写楽考」は……。
なぞの人物とされている写楽の実像を描く――。
お上品すぎるんだ。お勉強の成果をおひろめしてるというのか。
図式が見えちゃう。
だから批評家が論じるにはいいテキストなんだろうけど。
さすがに読売文学賞を取っているだけあって読み通せはした。
だけど、この「矢代静一名作集」に入っている他の戯曲(7作)を
読む気になったかと問われたら、
うーん、ごめんなさい、矢代静一はもういいです、となってしまう。
オニール、ストリンドベリ、ウィリアムズのように
骨までしゃぶりたいという欲望は起きない。
ま、江戸時代の空気がなんとなく吸えたし、うん、これはこれで良しとしましょう。