「男は「笑顔」だ!」(弘兼憲史/新講社ワイド新書)
→これも成功ノウハウ本になるのかな。
なんというか、その、今日びのサラリーマンは漫画家風情に生き方を教わるのか?
漫画家に説教されて啓発されるほどこころが弱っているのなら同情を禁じえない。
「こうしたらうまくいく」を教える本は、いうまでもなくみなフィクションである。
たまたまうまくいった例から、マニュアルや法則を見出しても意味がない。
いわずもがなではあるが、まったく再現性がないからである。
「おれはこうやってうまくいった」が万人に当てはまると思うのはほとんど白痴に近い。
なぜなら人生なんて、うまくいかないのが当たり前なのだから。
そうか! うまくいかないのは方法が悪かったからだとマジメなリーマンは思うのか!
もしなにか正しい方法をしていたら、失敗した例もうまくいっていた。
今後も正しい方法をしたら、百パーセントうまくいくに違いない。
こう考えるがゆえに、あまたの成功ノウハウ本が売れるのか、なるほど!
でもまあ実際は9割がたうまくいかないのが人生というものなのだろう。
たまたますいすい世を渡り歩いている人もいるが、あれは例外と思うべきなのではないか。
こうわかっているのに、どうしてわたしも成功ノウハウ本を買ってしまうのだろう。
たとえブックオフ百円本だとしてもだ。
おそらく酒に酔いながら読み、うまくいった自分をイメージするのが楽しいからだろう。
成功ノウハウ本は、安手の小説のような役割を果たしているのかもしれない。
つまり、現実逃避の道具になっているのである。
男は30歳を過ぎるとなかなか小説のウソについていけなくなる。
しかし、人間はウソなくしては生きられぬ。夢のようなものが必要だ。
このため多くの成功ノウハウ本が出版され買われ、あげく読み捨てられていくのだろう。
「ラクをしないと成果は出ない」(日垣隆/だいわ文庫)
→成功ノウハウ本として評価の高い本書を読んでわかったしまったことがある。
ぜったいにわたしは成功できない。
なぜなら成功マニュアルの要といってもよい効率思想に共感できないからである。
(ちなみに著者は売れっ子のライターさんね)
「仕事ができる人は、効率よく働く人。
言葉を換えれば、アウトプットしないことはインプットしない人です。
つまり必要なことはやる。それ以外はやらない。
これが効率化につながっています」(P202)
こちらはまったく効率を考えずに、必要でないことばかりやっているからさ。
しかし、どうなんだろう。たとえば、なにか本を読むとする。
本当に4時間かけるよりも30分で読み終わったほうが効率的でいいのだろうか。
たとえば、方丈記なら1時間程度で読もうと思えば読めるのである。
けれど、10時間以上かけてじっくり何度も読んだほうが味わいが深くはないだろうか。
そもそも仕事に関係ない本など読書対象にしてはいけないのかもしれない。
漫画だったら1時間で読むより、おなじもので2時間楽しめたほうがお得だよね。
これが間違っているのかな。
わたしは最近、漫画の読み方がわかったと思ったくらいなのだが……。
なるべく漫画はゆっくり読んだほうが作者の世界観を深く受容できると。
子どものころ漫画は定価に比して楽しめる時間の少ないのが不満だった。
めったに漫画は買ってもらえなかったから、繰り返し読んだものである。
「大人げない大人になれ!」(成毛眞/ダイヤモンド社)
→成功ノウハウ本。
著者はいまのわたしと同年齢でマイクロソフトの社長になったとか。
まったく人生は不公平、不平等に尽きると改めて思う。
成功者の著者は、自身が大人げなかったから成功したのだと因果関係を分析している。
どうして「たまたま」を理由にする成功者がいないのかはわからない。
失敗者のわたしの愚見では、大人げないことはむしろ人を成功から遠ざける。
統計的なことをいったら、そもそも大人げない人は千人中ひとりくらいしかいないと思う。
その大人げない人これまた千人のなかで成功するのはひとりくらいではないか。
この確率を勝ち抜いてたまたま成功者になったのが著者なのだけれど、
本人のなかでは自分が大人げなかった「から」成功できたのだという論理にすりかわる。
いかにも成功者にありがちの幼稚な(=大人げない)錯覚だが、
この子どもらしい思い込みには愛すべきものがあるような気がする。
わたしも著者に負けず大人げない大人だから、こういう成功本を読むのは楽しい。
もしかしたら自分も成功できるのではないかという空想にひたれるからである。
成功者の自己分析はこうである。
この記事をお読みのみなさんはもちろん大人だから、
こんな成功法則を真に受けないと信じてメモ書きしておこう。
なぜ大人げない大人がいいかといえば、物事に夢中になれるから。
大多数の意見より自分の感覚を信じられる大人げない大人はいい。
成功したかったら、具体的な目標を持たないことである。
なぜなら目標を持つとそれに縛られてしまい変化に対応できなくなるからだ。
大人げない大人は子どもらしさがあってみんなから好かれるので成功できる。
気乗りがしない仕事は、まだ機が熟していないということ。
締切直前まで仕事をうっちゃって遊んでいるのが大人げない大人のやり方だ。
大人げない成功者は偶然性をたいせつにする。
ほとんどのアイデアは偶然から生まれるのだから。
なるべく大人を怒らせるべし。成功したかったら大人を怒らせろ。
既得権益をひっくり返すような大人げない行為にビジネスチャンスが舞い込む。
大人が怒るということは、新発見の場合が多い。
それは既存の価値観を打ち破る革命的なビジネスにつながる。
もし以上のことを失敗者のわたしがいったら、だれも信じないでしょう。
そのことをご理解いただくために、あえて引用ではなく要旨を抜粋した。
しかし、大人げない大人はよろしい。
くうう、自分が好きだといっているに等しいから恥ずかしいぜ。
成功者の自己愛はカッコイイが、失敗者のおなじものほど見苦しいものはないのであ〜る♪
「この世でいちばん大事な「カネ」の話」(西原理恵子/理論社)
→人気漫画家サイバラの涙ぐましい成功ストーリーである。
読んでいて思ったのは、
まるで創価学会の会合や座談会で披露される体験発表のようだということ。
どん底の貧乏からいかに努力して成り上がったか、という物語だ。
不良(ワル)が成功来歴を得意気に語るという王道パターンを外れることはない。
これを読むと、いっとき(だけだが)底辺の人間でも成功できるような錯覚を得られるから、
口コミで大ベストセラーになったのだと思う。
もう出版されてかなり経ったいまならみなわかっていると思うが、
本著の愛読者で実際に成功したものはほとんどいないだろう。
ど貧乏な底辺の人間は未来を自力で変えられるという、
カロリーたっぷりでかえって不健康な砂糖菓子のような甘い嘘に飢えているのだ。
実家が周辺よりも比較的に裕福だったサイバラは、
そのことを皮膚感覚で感知したのではないか(P45)。
かなり皮肉な口調で斜めから論じたが、それでも本書は価値がある名著だと思う。
この本を読んでだまされているあいだは少なくとも幸福なのだから。
タイトルの主張する「人生でいちばん大事なのはカネ」というど真ん中の直球もいい。
まさしくその通り! 人生はカネだ! いちばん怖くて優しいのは人間ではなくカネだ!
どうしてサイバラが成功できたかと考えたら、カネがなかったからである。
貧乏の豊かさが本書には実にうまく描かれている(おそらく意図せずに)。
貧乏だからハングリーになれるのだ。
それから裕福の怖さも、
この本をよく読むとわかるようになっている(これまた著者の意図に反して)。
貧困だけではなく、金持になるのもまた怖いのである。
サイバラの旦那はヒモで自称写真家の鴨志田穣(愛称はカモちゃんで故人)。
漫画家はカモちゃんが結婚してからアル中になったと書いている(P222)。
しかし、これは優しい誤解ではないか。
わたしはカモちゃんの大ファンで著作をほとんど読んでいるが、、
彼はサイバラと出逢うまえから9割方アル中だったのではないかと思う。
ただ「いちばん大事な」カネがなかったから身体を壊すまではのめなかった。
ところが、裕福な人気漫画家サイバラと結婚したことでカネに不自由しなくなった。
このため、もとからアル中だったのが本物の病的な依存症患者になったのだと思う。
残酷なことを言うようだが、カネさえなかったら(=サイバラと結婚しなかったら!)
彼は42歳で死ぬことはなかっただろう。
しかし、カモちゃんにとってわがまま三昧に生きて早死にできたことは、
断じて不幸ではなくむしろめったにないたいへんな幸運であった。
かようにして貧乏も富裕も恐ろしいことが本書をよく読めばわかるようになっている。
まったく本当にカネは魔物だと思う。
無駄にあっても、なくても人間をダメにするのだから。
一般論(通念)として貧乏は不幸で、金持は幸福だと信じられている。
しかし実は正反対で怖いのがカネ余りで、豊かなのが貧乏生活なのかもしれない。
サイバラは本当にいい女だと思う。
彼女の好きな男のタイプはむかしから変わらないという。
「いまだにそういうところがあるのよ、わたしには。
世間が押しつけてくるルールなんて、どうでもいい。
俺は「俺ルール」で、ひとつ何かやらかしてやろうって人が大好きで、
おもしろがっちゃうところがある」(P35)
わたしはサイバラのような女性と結婚したいが、
いざそうなったら(幸福かもしれないが)人間として壊れてしまうに違いない。
しかし、サイバラはいい女だ。
サイバラのような女性と結婚できたカモちゃんは最高の幸運児だったのだと思う。
まったく疑いもなくそう思う。
「ウソつきは成功のはじまり」(内藤誼人/徳間書店)
→ブックオフの105円棚で久々にぶっ飛んだ本を見つけてしまった。
山ほど出ている過労死寸前のビジネスマンをだますための成功本だが、
本書はそのなかでも絶妙な味わいを持っているのではないか。
副題がなによりすばらしい。「他人をだますならまず自分をだませ」――。
大多数の成功本の書き手とは異なり、著者は教えを実践しているのがよろしい。
教えとはしつこいが、「他人をだますならまず自分をだませ」――。
著者は自分のことを心理学者と思っているようだ。
巻末のプロフィールでもそうなっている。
この本のなかでも「私は心理学者なので」と誇らしげに書いている。
ところが、著者はとある私大の社会学研究科が最終学歴。
いったいどこで心理学者になったのだろう?
さらに著者はただの心理学者ではないのである。
「ビジネス心理学では、他の追随を許さない圧倒的な巨人として知られる」(巻末)。
だれが著者を「ビジネス心理学の巨人」と称しているのであろう。
ほかならぬ内藤誼人先生ご自身がご自分を「巨人」とほめあげているのである。
まさにこれは「他人をだますならまず自分をだませ」の果敢なチャレンジ。
こうまで壮大なハッタリを使える度胸には感心した。
巻末の参考文献一覧も最高に笑える。
安手の自己啓発書を、さも学問ぶって羅列しているのである。
アメリカの成功ビジネス本は、
しっかり横文字で記載して権威を装うあこぎな手法も素敵だ。
「他人をだますならまず自分をだませ」を本気で実践している著者は本物ではないか。
本物の……これ以上は無駄口をたたかないでおこう。
成功するために必要なのは、「他人をだますならまず自分をだませ」――。
わたしはこの人を成功者だとは思わないが、本人がそう信じているのだから仕方ない。
これはもしかしたら最高の成功ビジネス本かもしれない。
ここにはなにかしら真実のことが書かれているような気がする。
ならば敬意を表して本書から少し引用しておこう。
「ゴールドスタインという説得研究家は、忙しそうにすればするほど、
その人の“希少価値”が高まるというアドバイスをしている。
実際、弁護士などは、事務所に電話がかかってきても、
なかなかコールに応じないことで、
自分の売れっ子ぶりをアピールする作戦を取っているという」(P20)
こう主張した舌の根も乾かぬうちに――。
「オランダのアムステルダム大学の心理学者マイケル・ハンドグラフ博士は、
弱い人間ほど、強い人間に比べて、他人からの援助を受けやすい
ということを確認している。
私たちは、弱者には、助けの手を差し伸べたくなるのだ。
「仕事ができる」ような顔をしていると、
だれもあなたを助けてくれなくなる」(P68)
「忙しいふり(仕事ができるふり)をせよ」と言った直後に、
このビジネス心理学の巨人は「仕事ができないふりをせよ」と説く。
それにさ、あんまり大声では言えないけれど、ゴールドスタインってだれ?
肩書の説得研究家って、読者を笑わせようとしているのかしら。
マイケル・ハンドグラフなんて人も知らないよ。
もしかしたらこの人たちも著者と同類の自称心理学者なのだろうか。
とはいえ、この人は著書百冊を誇る人気作家なんでしょう。
たしかに「他人をだますならまず自分をだませ」の教えは偉大である。
実践できるかはちょっと自信がない。しかし、名著であった。星五つ。
「人生は勉強より「世渡り力」だ!」(岡野雅行/青春新書)
→たまになら無邪気に勝ち誇る成功者の自慢話を聞くのも悪くない。
著者は有名な職人さんである。
はっきり言っておくが、この人の真似をしても全員成功できるわけではない。
成功者というパイは極めて少ないから、
みながなるのは世の中の仕組みとしてありえないのである。
しかし、成功ってなんだろう?
「人よりすぐれたものがあれば、成功する確率が間違いなく高まるね。
平たく言えば、人より旨いものが食える、いい洋服が着れるってことだよ」(P174)
批判しているわけではないが、考え方が古いよね〜。
こちらはもう若くはないが、いまの若い人は欲しがらないでしょう。
わたしも味盲だから、べつに旨いものを食いたくはない。
容貌があれだから、似合わぬ高級衣服など身にまといたくない。
本書でいろいろ成功ノウハウが書かれているがむしろ有害なのではないか。
というのも、失敗しなくなってしまうからである。
本書のノウハウは、すべて著者の失敗から得られた教訓である。
「本やネット情報をいくら読んだって、
「へぇ、世の中、こんなこともあるのかね」くらいのことでしかないけど、
実体験は重みが違う。
必ず、自分の血にもなり肉にもなるんだ」(P117)
「失敗はしたくない、できるだけしないほうがいいって考えてるヤツが多いけど、
失敗しなきゃ、成功なんかできっこない。
失敗を怖がってちゃダメなんだよ」(P179)
「失敗するたびに、新しい発想やアイデアが湧き出てくるんだよ」(P180)
これはもう本当で実体験の失敗の痛みほど人生を学ぶものはない。
選択を間違えて叩かれるから、人はいろいろ考えるのである。
だから、本書で知っておくノウハウは引用部分だけでいいのだろう。
なぜなら失敗しなくなったら元も子もないではないか。
本書で著者が繰り返しているのは、人付き合いに金を使うこと。
お世話になった人にはかならず贈り物をする。
しかし、これは唯一絶対の正しい回答ではない。
エッセイで知ったのだが、某人気脚本家は贈答品に迷惑しているらしい。
しかし、たしかに不要な贈り物をし合えば経済はまわる。
日本経済の発展には贈答品文化が多大なる寄与をしたのだろう。
「奇跡のリンゴ」(石川拓治/幻冬舎)
→だれもが無理と断言していたリンゴの無農薬栽培に成功した、
――「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録。
この成功物語はNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも放送され、
多くの視聴者が感動したということです。
たまに電波が入った人が誇大妄想的な夢を抱くことがあります。
こういう人物には周囲が迷惑させられますから、大概はつまはじきもの。
実際、木村さんも友人から見離され、実家からも勘当同然だったとか。
しかし、誇大妄想者は夢をあきらめずに長年、努力を継続した。
結果として、リンゴの無農薬栽培に成功!
周囲はてのひらを返して、この成功者を祭り上げたということらしいのです。
この書籍はある若い女性からプレゼントされたのでありますが、
いったいどういう意図があったのでしょうか。
誇大妄想狂も運よく成功すれば、大勢の人間から絶賛される……。
この場合、成功したから美談になるのでしょうが、もし失敗のまま終わったら。
実のところ世の中にはそういう自称パイオニアが山ほどいると思われます。
成功できなかった誇大妄想狂ほどみじめな敗残者はありません。
こういう失敗者に世間は目もくれません。
ところが、ひとたび成功したら「感動した」「夢をもらった」のお祭り騒ぎ。
「あきらめなければかならず夢はかなう」「努力はぜったい報われる」――。
世間というものは、げに恐ろしきものであります。
わたしも木村さんとおなじで誇大妄想患者なのでしょう。
いや、あちらは成功者ですから、もはや誇大妄想狂ではない。
こちらが成功する確率はほぼゼロかと思われます。
ハハハ、こういう本を読んでももう夢を見られないくらい落ちぶれてしまいました。
いかん、いかん、カンフル剤を打たねば。
「パイオニアは孤独だ。何か新しいこと、
人類にとって本当の意味で革新的なことを成し遂げた人は、
昔からみんな孤独だった。
それは既成概念を打ち壊すということだから。
過去から積み上げて来た世界観や価値観を愛する人々からすれば、
パイオニアとは秩序の破壊者の別名でしかない」(P140)
ううう、効きが悪いです。二十代なら、もう少し効いたのかもしれません。
せっかくプレゼントしていただいたのに、この情けない始末。
本当に申し訳ありません。けれど、いただいた翌日に読みましたからね。
もう逢うことはないでしょうから、万が一ブログをお読みでしたらと、
礼状代わりにこの記事を書いた次第です。
「非属の才能」(山田玲司/光文社新書)
→これもまた成功本です。著者は漫画で成功した(と思っている)模様。
成功本を読む人間は嫌いだから、わたしはたぶん自分が嫌いなのでしょう。
もちろんさすがに素面で成功本を読むほどの向上心はありません。
ブックオフにて105円で買った成功本を酒をのみながら読むのです。
酔っ払って成功した自分を思い浮かべうっとりする。
なんともいじらしいではありませんか。あわれでしょう、泣けるでしょう?
この成功本にはわりかし満足していたのでアマゾンのレビューを見てビックリ。
成功者の著者があろうことかレビュアーにタコ殴りにされているからです。
内容は、ふつうの成功本なんですよ。
まえに読んだ「メシが食いたければ好きなことをやれ!」と似たようなことを主張しています。
変わり者になれ。群れに属すな。流行を嫌え。テレビを見るな。
どうして成功者の山田玲司先生が叩かれなければならないのでしょうか?
おそらく、成功のレベルが少し低かったからだと思います。
イチローやエジソンといった成功例を挙げているわりにご自分は……。
読者は非情なものですね。
書いている内容ではなく、だれが書いているかで判断するのですから。
「おまえは自称成功者じゃないのか?」と思われてしまったのではないでしょうか。
成功者・山田玲司先生の漫画はスピリッツで拝見したことがあります。
周囲の漫画家のレベルがあまりに高いこともあり、
わたしは先生の漫画をあまりおもしろいとは感じませんでした。
(もっともこちらに漫画の批評眼はぜんぜんありませんけれど)
しかし、成功本を書いているのだから山田玲司先生は成功者ではありませんか。
アマゾンのレビュアーは意地が悪いと思った次第です。
これをビートたけしレベルの成功者が書いていたら絶賛の嵐だったことでしょう。
本書の内容はむしろ同著者の漫画よりもおもしろいとわたしは思いました。
成功本は成功するために読む本ではありません。
成功した自分を想像して現実逃避するために失敗者が読む本です。
したがって、みなさんご存知の通り、成功本をいくら読んでも、まあ成功はできないでしょう。
成功法則のようなものはありません。なぜなら成功するかどうかは運ですから。
かといって「運を良くする」本に夢中になるよりは、まだ成功本のほうが健全です。
「運を良くする」は、莫大なカネのかかる新興宗教と紙一重で非常に危険であります。
成功本ならブックオフ105円棚で買えば(山のようにある)大してカネはかかりません。
そのうえ、もしかしたら――。
成功を夢見て成功本を読んでいる時代のほうが、
成功者になってからよりも幸福かもしれない。
成功者は息つく暇もないほど多忙で、なおかついわれのない嫉妬(中傷)を受ける。
成功は目指しているうちが華。みなさんもどこかで気づいているのではありませんか?
「メシが食いたければ好きなことをやれ!」(岡野雅行/こう書房)
→副題は“世界一の職人が教える「自分ブランド」「人づきあい」「心丈夫」の方法”。
いわゆる成功本というやつであります。
いったいどれほどの人が成功本を読んで成功を目指しているのでしょう。
人とおなじことをするのは嫌だから、成功なんて興味がないふりをしていました。
けれども、本音はやっぱりみなさんとおなじで成功したいんです。
それも大きな成功をしたいんだから、ほんと欲深い性質(たち)であります。
業界で細々と食べていくくらいなら、いっそのこと野垂れ死にしたほうがいい、なんて。
いけません、いけません。誇大妄想狂は始末におえませんもの。
やはりわたしもみなさんとおなじなんです。
だって、成功を願って、こういう本を読んでいるのですから。
徹底的にありきたりでしょう。まったく無個性な人間ではありませんか?
これで感銘を受けたところを書き出したりしたら目も当てられません。
ところが、それをやってしまおうというのです。
だれもがやることをやってしまう!
こんな人間が成功できると思う人はまさかいらっしゃいませんでしょう?
ええ、はい、この記事を書くことで、なかば大成功をあきらめてしまったのかもしれません。
というのも、人の真似をするような凡人が大成功などおさめられるはずがないですから。
「余暇で好きなことをやっているのは、仕事が好きでないやつがすることなんだ。
人生の大切な時間を、そんなことでごまかしちゃダメだよ。
俺は仕事が好きだから、1分でも長く旋盤の前に立っていたい」(P1)
「就職を希望するときに、よく「僕は何でもできます!」って言うやつがいるだろう?
俺に言わせれば、オールマイティじゃダメ」(P194)
「自分の仕事に見合った給料をもらうには、
自分をブランド化させてしまうのが一番なんだ。
そのためにはただがむしゃらに働くだけではダメだよ。
仕事ができるっていうのも大切だけど、だれにでもできる仕事ばかりやるんじゃなく、
「これはあいつじゃないと任せられない」って分野を作るんだ。
それには信頼もされないとな」(P51)
「腕に職をつけて、自分でなきゃこの仕事をできないというブランドになれ!
そうすればいつまでも社会から引く手あまただよ。
自分が作るものによって感謝されるんだから、やりがいだってものすごくある」(P105)
「変わってなくちゃダメなんだ。人と違っていなくちゃ成功しないんだよ」(P91)
「だって他の人と同じコトをやっていたって、大して儲かりはしない」(P114)
「あんたの個性が飛び出たところで、
その飛び出たところを必要としてくれる人はたくさんいるはずだ。
俺の場合がそうだったように、
その人たちがさらにあんたを広い世界に連れ出してくれるかもしれない」(P115)
「自分が好きな人やお世話になった人、そんな人たちとの関係を、
本当の付き合いにするかどうかはあんた自身にかかってるんだよ。
人が運も縁も運んでくれるもんだと俺は信じている。
人間づき合いがいくら下手でも、
きちんと誠意を持って接すれば、おのずと人はついてくるよ。
あんたが本当の付き合いをしていれば、
あんたが困った時に、誰かが絶対に助けてくれるはずだよ」(P29)
「30日で夢をかなえる脳」(石浦章一/幻冬舎)
→副題は「自分を変えるなんて簡単だ」。
そのうえ「夢をかなえる」というタイトル。
著者の石浦章一は(わたしが落とされた)「東京大学」の教授。
それもいま流行の「脳科学」が専門。
極めて新しい「2009年」出版。
さらにさらに出版社は「幻冬舎」――。
マイナス要因が行列しているなか、一発逆転させたのは「ブックオフ105円本」。
ふだんならカネをもらっても読まないような本だからこそ、あえて――。
たまさかいつもと正反対の行動をしたくなるときがあるのだ。
だれかが言っていたけれど、時代はいつしか心理学から脳科学にうつったと思う。
けれども、基本はおなじ。どちらも常識を述べるのみだから。
人はほめると育つ。
眠るのは健康にいい。
コーヒーをのむと集中力があがる。
インプットだけではなくアウトプットも必要。
肉より魚を食え。
うつ病は増えている。
散歩は健康によろしい。
たとえば以上のようなことが最先端の脳科学の知見として語られる。
まあ、常識に近いでしょう。
けれども、東大教授で脳科学専門なら売れると幻冬舎の編集者は考えた。
アマゾンのレビューを見て、この国は崩壊すると確信した。
だって、みなさん怒っているのだから。いわく、タイトルにだまされた。
そりゃあ、だまされるほうが世間知らずでしょう。
たったの30日で夢がかなうわけがないと思わないのか。
おまえらはどんだけバカなんだよ。選挙権を剥奪してやりたい。
ひとつ、自分を励ます言葉を引用しておこう。
というのも、結局、読書とは(創作とおなじ)自慰なのだから。
脳科学的にアイデアとはなにか?
「アイデアの正体を考えてみると、おそらくは過去に蓄積していた知識の
「組み合わせ」によって生まれるのではないかと思われます。
一見なんの関係もなさそうなAという知識とBという知識を組み合わせることで、
想像もしていなかったアイデア「C」が生まれる。
そんなイメージだと考えてください。
となると、結局アイデア力は「組み合わせ力」の有無、
また組み合わせる素材の豊富さによって決まってくることになります。
そのため、最近ではどれだけ「自分の専門外」の知識をたくさん持っているか
が重要なのではないかといわれています」(P138)
だとしたら、いつかこのブログ「本の山」の役立つときが来るのでしょうか?