※第51回NHK創作ラジオドラマ大賞応募作品。
(用語説明)
SE=サウンドエフェクト。効果音。
M=モノローグ。独白。


〇 梗概
 性分化疾患という難病がございます。外性器異常です。男性か女性かわからない。非常に罹患率の低い病気で、思春期に問題が発生するケースがあります。
 元気です。こんな難病にかかっているのに霧島葵(11)は元気です。くじけていません。明るいのです。悪戯が大好きです。美少女、美少年でもあります。
 中学に上がるまえに性別を決めようと医者から言われます。葵は考える。男と女、どっちがいいのだろうか? 父親も母親も自分の性別がいいとは言い切れません。でも、そんな大事なことを自分で決めろと言われても困っちゃいますよね。
 葵は酒井茜(11)から告白されます。好きです。つきあって。え? 好きになるってどういうこと? つきあうって、どういうこと? 葵は考える。
 おりしも父親が女をつくって家を出て行きます。男ってなんだ? 女ってなんだ? またまた葵は考える。ときには男の子になって。またべつのときには女の子になって。くよくよ悩まない。遊ぶように生きている。
 そんな葵を見守るのはバイオリンがうまい姉の緑(14)、友人のユリエ(11)であります。緑はユリエの兄のレオナルド(15)とつきあっています。
 少年少女たちの「恋愛ごっこ」もなかなか複雑。葵は茜に振られたと思ったら、ユリエから告白されます。う~ん、自分は男子なのだろうか? 葵は不思議な感じ。
 男性と女性の違いってなんでしょうか? これをお読みくださる方は男性ですか? 女性ですか? 男でよかったですか? 女でよかったですか? 男になりたくはないですか? 女になりたくはないですか? 次に生まれるとしたら男と女、どっちがいいですか? えええ? 本当に男? 本当に女?

〇 登場人物
霧島 葵(11) 小学生
霧島 緑 (14) その姉。中学生
霧島 武史 (46) その父。会社員
霧島 しおり (43) その妻。パート。
酒井 茜(あかね) (11) 小学生
ユリエ (11) 小学生
レオナルド (15) その兄。中学生。
ディーノ(43) その父。イタリア人。
高島貴子 (44) その妻。日本人。
医者(60)男
神父(55)男
その他、大勢の市井を生きる人たち。

○ 本文
  霧島葵(11)の性別はわからない。少女のような声だが、声変わりまえの少年かもしれない。どちらかと言えば女性的。

葵M「不幸ってだれが決めるんだろう? だって不幸って思えば不幸でしょ? 反対に幸福って思えば幸福なのだから。鏡を見る。うん。なかなかいい顔だ。3歳上の姉からはかわいいと言われている。11歳だからかわいいと言われている気もしなくもない。そこはちょっと不満。これから難病の子供の、つまり私の、ちっとも不幸ではない話を始めますね」

  SE ドアをノックする音。
  ドアが開き、緑が入ってくる。

緑「葵、聞いて」
葵「いやだ」
緑「彼、これくれたの。レオナルド。特別なチョコレートだって」
葵M「私は思う。浮かれている。女っぽい。女の顔だ」
緑「葵にもわけてあげる」
葵M「それ苦いからいや、とは言えない。もうすぐ大人になるのだ。甘いだけのチョコレートからは卒業する」
緑「ああ、葵はこういうの嫌いか」
葵「ううん。ありがとう」
緑「でさ、今日病院どうだった?」
葵「別に」
緑「葵は葵らしくしていたらいいんだから」
葵「お母さんからも言われた」
緑「だって、本当のことだから」
葵「心配しているの?」
緑「え?」
葵「かわいそうとか思っている?」
緑「そういうわけではなくて」

  SE 携帯電話が鳴る。

緑「レオナルドから。じゃあね」

  SE 緑はドア開けを出て行く。

葵M「特別なことは不幸だろうか。というのも、選ばれた人間とも言えるからだ。ヒーローじゃないか。ヒロインじゃないか。変な病気を持って生まれてきた。難病らしいが自分ではそうとは思わない。性分化疾患。性別が分かれるときの病気。性別、男女は生まれたときの染色体とやらで決まるらしい。染色体の意味はお医者さんに何度聞いてもわからない。私は染色体の上では一応女性らしい。しかし男にもなれる。すばらしいことじゃないかと思うが、医者は僕をいつもかわいそうな目で見る」

  SE 病院の雑音。患者のアナウンス。

医者「そう。そう考えたらいいんだよね」
しおり「でも、うちの葵、悩んでいるんじゃないかと」
医者「めずらしいケースだからね。私も長年、医者をやっているが見たのははじめてだ」

  SE ドアが開く。

しおり「葵、勝手に入ってきちゃ(ダメ)」
葵「お母さん、もう私、大人。いろいろ本当のことを知りたいの。先生、教えて」
医者「お母さん。いいんですか?」
しおり「葵(困っている)」
葵「先生!」
医者「葵さんはね。もうすぐ男か女か選ばなきゃならないんだ」
葵「知っています」
しおり「葵!(どうして?)」
葵「お母さんとお父さんが話しているのを盗み聞きした」
医者「そう」
葵「私、ちっとも不幸じゃないから。自由ってことじゃない。二人ともそんなあわれんだような目で見ないで」

  SE 葵は駆け出す。ドアがしまる音。

葵M「難病の子は不幸なんて決めつけられたら困る。いまの学校はしっかりしているから、いじめなんかない。トイレは先生用。着替えは特別室。それだけのこと」

  SE 暴風の音。テレビが台風を伝える。

葵M「台風が来て、私は同級生の茜に告白された。もてるのだ。好きだ。つきあってください。茜はとても女の子っぽい」

葵「茜は、私のどこが好きなの?」
茜「ぜんぶ」
葵「いままでもつきあっていたじゃない。家にも遊びに来ていたし」
茜「そうじゃなくて。特別なつきあい」
葵「特別?」
茜「そう。わからない? テレビとか見ない? 漫画、読まない?」
葵「うーん」
茜「バカ」

  SE 茜は駈けだす。

葵「ちょっと待って」
茜「なに?」
葵「僕、茜とつきあってもいい」
茜「じゃあ、抱きしめて」
葵「わかった」
葵M「茜の胸は少しふくらんでいた。僕の胸はまだそこまでふくらんでこない」

  SE バイオリン。「ドッペル」。二重奏。緑とレオナルド。

葵M「姉の緑とその恋人のレオナルドの演奏だ。やっぱりバイオリンは女のほうが見映えがする。私の隣に座っているのはレオナルドの妹のユリエ。レオナルドとユリエのお父さんはイタリア人。お母さんは日本人」

ユリエ「うまい。やっぱりつきあっていると演奏もうまく合うのね」
葵「そうかな? つきあうってどういうこと?」
ユリエ「葵はそんなことも知らないの?」
葵「僕だってそのくらい知っているよ」
ユリエ「どういうこと?」
葵「こういうことだ」
ユリエ「(ちょっと驚いた悲鳴)」
葵M「僕はユリエを抱きしめてやった。ユリエはいやそうな顔をすると思ったら、意外と平気そうだ。またユリエの胸のふくらみが気になった。茜よりも大きい」
ユリエ「乱暴」
葵「ユリエ、いい匂いがする。それになんだかきれい」
ユリエ「ママから香水を借りたの。ちょっとだけお化粧もしてもらった」
葵「ねえ。悪戯しない?」
ユリエ「どんな?」
葵「服を交換するの。ユリエが僕の服を着て、私がユリエのフリフリの服を着る。香水も貸して」
ユリエ「おもしろそう。葵、すごくかわいくなりそう」
葵「私も自信ある」

  SE 小さく「ドッペル」が続く。

ユリエ「葵、いいよ。美少女。アイドルになれる」
葵「うん。応募しちゃおうかな」

  SE 「ドッペル」がやむ。
  ドアが開く。

レオナルド「おまえたち、なにやってんだ?」
ユリエ「悪戯よ、お兄ちゃん」
緑「葵? 葵なの?」
葵「お姉ちゃん、見違えた? レオナルドさん、鬼ごっこしよう。私を捕まえてみて。できなかったら、あれを親にばらす」
レオナルド「あれってなんだよ」
葵「お姉ちゃんとキスしていたでしょう?」
レオナルド「あれはおまえ、イタリアでは」
葵「よーい。スタート」
レオナルド「おい、待てよ」
ユリエ「緑さん、あれやって。ほら、運動会のあれ」

  SE 運動会の「徒競走」を緑がバイオリンで弾く。葵とレオナルドが鬼ごっこをする駆け足の音。

レオナルド「捕まえた。男にかなうと思うなよ」
葵「わざと捕まったの」
レオナルド「どういうこと?」
葵「ねえ、私の胸に触ってみて」
レオナルド「え?」
葵「どう? どんな気がする?」
レオナルド「そんな(ことを言われても)」
葵「変な気がする?」
レオナルド「(正直に)うん」
緑「ちょっと葵。なにやっているの。レオナルドは私の(彼氏)」
葵「(さえぎり)だから、なに?」
ユリエ「葵、パンツ丸見えよ」
葵「レオナルドさんに見られるんならいい」
緑「ふざけないで!」

  SE ドアが開き、ドタドタ人が入ってくる。怒っている。

武史「葵、緑! 人様の家にご招待されて、なにをやっているんだ?」
緑「お父さん、葵がね、ひどいの」
ディーノ「(以下、外国語なまりの日本語で)レオナルド、お嬢さんになにをしている?」
葵「お嬢さん?」
ディーノ「いや、その、なんていうか」
緑「この子。女よ。だってレオナルドを」
葵「なに?」
緑「葵の意地悪!」
貴子「とにかくレオナルド。葵さんから離れて」
しおり「葵も。そんなはしたない格好をして」
緑「僕がはしたない?」
しおり「お父さん、なんか言ってあげて」
武史「ここはお母さんが」
しおり「なによ。お父さん、子供たちの世話をいっさいしないんだから」
緑「お父さん、お母さん、こんなところで夫婦喧嘩はやめて」

  SE 両家は別れの挨拶をする。

葵M「イヒヒ。エヘへ。ウフフ。僕は悪戯少年なのだ。私はお転婆な少女なのだ。不幸な少年でも、不幸な少女でもない。それにしてもお姉ちゃんのあのときの顔と言ったら。ザマアミロと思っちゃった」

  SE 風の音。枯れ葉が散る音。

葵M「紅葉の時期が終わり枯れ葉も散り季節が変わった。声変わりする男子が現われた。私の胸が少しふくらんできた。お医者さんがあせりはじめた。ユリエがうちの小学校に転校してきた。最大の事件はお父さんが女をつくって家を出て行ったことだ。いきなりだった」

  SE 緑がメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲を練習している。ドアが開く。バイオリンがとまる。

緑「ノックして、と言ったでしょう?」
葵「そんなことより知っている?」
緑「お父さんのことでしょ」
葵「お母さん、泣いてた」
緑「(冷めて)そういうものよ。人の気持は変わるの」
葵「ねえ、お姉ちゃん。まじめな話をしていい?」
緑「なによ急に(警戒している)」
葵「女って損じゃない?」
緑「いきなり、どうして?」
葵「なんかお母さんを見ていたら」
緑「(しんみり)うん。そうね」
葵「女として生きていてどう?」
緑「どうって。変えられないんだし」
葵「お姉ちゃん、知っているでしょう?」
緑「――うん」
葵「男になったほうがいいのかな?」
緑「葵はどう思うの?」
葵「男って、がさつだし、なんかきたない」
緑「へえ。葵もそんなこと思うんだ」
葵「言わなかったけどね。体育のまえにね」
緑「うん」
葵「ひとりで着替えていたら、クラスの男子がのぞいてきた。すごい、いやだった」
緑「先生に言った?」
葵「ううん(言わない)。女の子みたいじゃない」
緑「葵はかわいいから」
葵「じゃあ、女になったほうがいい?」
緑「イケメンになるのも」
葵「そうね」
緑「変なこと聞くけど、子供は産めるのよね?」
葵「もうすぐ決めなきゃいけないの」
緑「葵はいまの葵でいいとしか」
葵「それじゃダメみたいなの」
緑「そう」 

  SE ドアがノックされる。

しおり「ちょっといい?」
葵「お母さん、なに?」
しおり「葵、さっきお母さん、泣いてなんかいないから」
葵「(強がりだとわかるが)そう」
緑「いま葵に聞かれちゃった。お母さんは女として産まれてよかった?」
しおり「いまのお母さんにそんなこと聞く?」
緑「ごめん」
しおり「(疲れたように)結局は男性社会よね。お母さんのほうがお父さんよりいい大学なのよ。会社もそう。でも、結婚してあなたたちを産むとなったら」
緑「会社を辞めなければならなかった」
しおり「そういうこと。いくら優秀でも男にはかなわないようになっている」
葵「じゃあ、僕、男になったほうがいい?」

  SE 駅のホーム。雑踏。
  チンピラの怒鳴り声。怖い。

チンピラ「じゃあ、俺が痴漢をしたって言うのかよ。どこに証拠がある?」
茜「私、見たもの」
葵「僕も見た。ユリエの胸に触っていた」
チンピラ「おまえら中学生か?」
ユリエ「(勢いにおされ)小学生よ」
チンピラ「小学生に痴漢なんてするかよ。言いがかりはやめろよ」
葵「おまえ、待て」
チンピラ「ボウズ、男なのか? やるか、このう。ちょっと駅の外に出ろ」
茜「葵、逃げよう」

  SE 子供たち3人が走っていく。

ユリエ「実は痴漢、はじめてじゃないの。茜もされたことある?」
茜「私はまだ。ユリエみたいにスタイルよくないから」
葵「僕、男性ホルモンとかいうのを入れてもらおうかな。そうしたら強くなる。ああいうやつからユリエを守れる」
ユリエ「ケンカ強くなりたい?」
葵「いまはそう思った」

  SE クリスマス・ソングが流れる。
  公園。子供の遊ぶ声など。

葵M「急速なスピードでなにかが変わり始めていたが、それがなにかはわからなかった。父はまだ家に帰って来ていない。僕は茜と公園にいた。茜のやつ、ユリエを意識してか最近妙に女っぽい格好で、クラスの男子の人気も上がっている」
茜「今日で一緒に帰るのやめない?」
葵「どうして?」
茜「ほら、男子がうるさいじゃない」
葵「もう僕のことを好きじゃないの?」
茜「好きってどういうこと?」
葵「それは(言いよどむ)」
茜「ほうら、葵もわからない」

  SE 焼き芋屋。

葵M「僕は姉とレオナルドのキスを思い出した。茜に無理やりキスしようとした。逃げられた」
茜「いきなりなにするの?」
葵「ユリエが外国の人はみんなこうするって」
茜「乱暴」
葵「ごめん」
茜「葵らしくない」
葵「葵らしいってなに?」
茜「わかった」
葵「なにが?」
茜「こうしたら、いまのこと許してあげる」
葵「なに?」
茜「私、バイオリンを始めたの。もういまからは遅いかもしれないけれど」
葵「そう」
茜「だから、西洋の世界に興味あるの」
葵「うん」
茜「葵、一家で行くと行っていたでしょう。クリスマスのミサ」
葵「うん。ユリエの一家とね」
茜「そこに私も連れて行って」
葵「あんなの、つまらないよ」
茜「いいから」
葵「わかった」
茜「繰り返すけれど、もう一緒に帰るのはなしだからね」

  SE 茜の去っていく足音。

ユリエ「葵、茜に振られちゃったね」
葵「なんだよ。聞いていたのか」
ユリエ「葵、私がキスしてあげようか?」
葵「からかうなよ」
ユリエ「男の子みたい。(ふざけて)怖―い。ねえ、葵。また服の取り替えっこしない? 葵、かわいいからもてると思うな。着なくなった女の子らしい服、あげようか? 私、あの日の美少女の葵がとっても好き。男子なんかよりよっぽど」
葵「え?」
ユリエ「ミサも女の子の格好でくればいいのに。みんな葵に注目する」
葵「そんなことを言われても」
ユリエ「そうしない?」
葵「そもそもミサでそんなことしていいの?」
ユリエ「ミサってなんだか知ってる?」
葵「ええと(知らない)」
ユリエ「神さまの儀式。神さまはなんでも見ている。神父さまはなんでも知っている」
葵「なんでも?」
ユリエ「そう。なんでも」

  SE 廃品回収車。

葵M 私は、いや僕はいきなりユリエに抱きつかれキスをされたのだった。イタリアではみんなそうするというが本当だろうか。はじめてだった。女の子が怖くなった。私はユリエに逆らえず女の子の格好でミサに行った。

  SE バイオリンで演奏される讃美歌320番「主よ御許に近づかん」。

葵「神父さま。私はどうしたらいいと思いますか?」
神父「わかりません」
葵「でも、神父さまには男性しかなれないんでしょう?」
神父「そうです」
葵「なら、男性になったほうがいいのですか?」
神父「お医者さんはなんと?」
葵「自分で決めろと。そんなことを言われても。神父さんはみんなわかっているんでしょう?」
神父「わからないことを、わかっているのです。人間にはわからないことがあるということを」
葵「いったいどうしたらいいのでしょう?」
神父「きっと神さまが解決してくれます。それを待ちましょう」
葵「それと、あの(言いにくい)」
神父「なんでも言ってください」
葵「じゃあ、言うけれど」
神父「はい」
葵「さっき女の子に、好きだって」
神父「カトリックでは同性愛はあまり好ましいものとされていません」
葵「どうして?」
神父「そう教えられています」
葵「カトリックじゃなければいいの?」
神父「これまたわかりません」
葵「わかんないことばっか」
神父「神さまを信じることです。ではミサが始まりますので中に入ってください。祈るのです」

  SE 教会に入る人たち。

葵M なんだかうまくごまかされたような気がした。ミサには私の一家とユリエの一家。それから茜が来ている」
茜「なにその服」
葵「いいだろ」
茜「もっと女の子っぽい言葉を使いなさい。まったくなに? そのヒラヒラした服。男子を意識しすぎ。色気づいている」
葵「ユリエがこれを着ろって」
茜「それから足を閉じなさい。前から見えちゃう」
葵「茜、なんか怖くなった」
茜「そんなことない」
葵「あるよ」
茜「もしかして葵、だれかを好きになった?」
葵「どうしてそうなるの?」
茜「私のこと、好きなんじゃなかった? 裏切り者。信じていたのに」
葵M「正直、どうして茜が怒っているのかわからなかった。たしか茜には振られているはずなのに。女の子はわからない」

  SE バイオリンで演奏される讃美歌312番「いつくしみ深き」。

神父「今日はお子さん方もたくさんいらしています。少年少女に言いたいのは人を愛すことの意味。愛する。好きになる。愛するとは信じることです。他人を信じる。これほど簡単そうで難しいことはありません。多くの人を愛してください。信じてください。裏切られることでしょう。そこからまた愛する勇気を持ってください。許す優しさと一緒に」
葵M「私は母のほうをこっそり見たら、ハンカチで目を拭いていた。どうして父は母を泣かせるようなことをしたのか。男の人のこともわからない。初雪が降った日、いきなりだ。父が家に戻ってきた。私と姉は盗み聞きをする」
しおり「どうして帰ってきたの?」
武史「わかるだろう?」
しおり「自分のしたことをわかっているの?」
武史「わかっているに決まっているだろう」
しおり「なら、どうして、のこのこと?」
武史「わからないか?」
しおり「なにをわかれっていうの?」
武史「どうして女はこうガミガミ言うんだ?」
しおり「その女となにをした?」
武史「1回だけだろう」
しおり「どこまで本当だか」
武史「本当だよ。ひどい目に遭った」
しおり「自業自得ね」
武史「1回遊んだだけだよ。取引先の女だ。酒を飲んだら、そういう流れになったんだ。人間はだれだってミスをする」
しおり「開き直る気?」
武史「ひどい女でね。大人だろう。同意の元じゃないか。どっちも楽しんだ。それなのに乱暴された。警察に被害届を出すって大騒ぎ。知り合いに聞いたら警察は女性の味方をするという」
しおり「当り前よ」
武史「大きな仕事を回してやったよ。自分から誘ってきたようなものだろう。俺が乱暴されたようなものだ。そんなことを言ってもだれも信じてくれない」
しおり「よくぬけぬけと妻のまえでよその女のことを話せる」
武史「わかってほしいからだ」
しおり「だから、なにを?」
武史「まだわからないのか?」
しおり「どこにいたの?」
武史「友人のところだよ」
しおり「あなたに友人なんかいた?」
武史「大学の友人だ。男が社会に出たら友達なんかできるか?」
しおり「奥さん迷惑したでしょうね」
武史「独り者だよ。独身。女なんか大嫌い。一生結婚なんかしないと言っている」
しおり「もてないだけでしょう」
武史「ばれていないと思っているのか? おまえだって1回浮気しているだろう? これで5分と5分じゃないか? 妻を寝取られた男がどれだけみじめかわかるか」
しおり「浮気なんかしていない」
武史「ウソつけ。顔色が変わっているぞ。女はすぐウソをつく。それに知っているんだぞ。おまえイタリア勤務のとき、だいぶ遊んだって言うじゃないか。ディーノくんから聞いたよ」
しおり「男のくせに口が軽いのね」
武史「そんなのに男も女もあるか」
しおり「結婚まえのことじゃない? あなたも遊べばよかったのよ。小さい男ね」
武史「そういう問題か? 違うだろう。俺なんかぜんぜん遊んでこなかったぞ。きつい仕事を回されて」
しおり「もてなかっただけじゃない」
武史「ひどいな。金だって毎月しっかり振り込んでいただろう? 許してくれてもいいじゃないか?」
しおり「許してほしいの?」
武史「まだわからないのか?」
しおり「離婚してもいいのよ。うちはディーノさんの家と違ってカトリックじゃないんだから」
武史「だったら、こうして戻ってくるか?」
しおり「結婚式のときのこと覚えている? あなた私と結婚できて嬉しいって、めそめそ泣いていた」

  SE 物音がする。

緑「フフフ(思わず笑ってしまう)」
葵「お姉ちゃん。ダメ(ばれる)」
武史「緑、葵、そこにいるのか?」

  SE ドアが開く音。葵と緑が出て来る。

武史「聞いていたのか」
緑「聞いていない」
しおり「本当?」
葵「本当に本当に本当」
武史「お父さんが帰ってきて、お帰りなさいもないのか?」
しおり「なにをして帰ってきたの?」
武史「子供たちのまえで言うことではないだろう」
しおり「父親ぶらないで。子供の世話なんてほとんどしていないでしょう?」
武史「本当はしたかったんだよ。仕事、仕事で、できるわけがない。俺は仕事なんかよりも子育てがしたかった」
しおり「男のくせに」
武史「それを言うなら、おまえももっと女らしくしろ」
しおり「セクハラ発言ね。さっきから、おまえ、おまえってなにさまのつもり?」
武史「しおり。これでいいか?」
しおり「ねえ、緑、お父さんとお母さん、どっちが好き? 葵、お医者さんに言われているでしょう? お父さん、お母さん、好きなほうの性別になればいいのよ」
緑「喧嘩はやめて」
しおり「葵、どっちが好き」
武史「どうせお母さんって言うんだろう? ああ、いまは女性の時代。女になったほうがお得かもな」
しおり「なに言ってんだか。私だって仕事をバリバリしたかったのに、お父さんが結婚してくれって泣いて頼むから。なにが女性の時代よ。復職なんかぜんぜんできないじゃない。せいぜい派遣仕事」
緑「ふたりとも性別を交換したら?」
葵「お姉ちゃん。喧嘩をあおらない」
緑「私はお母さんの味方」
武史「ああ、そうだろうよ」
葵「お父さん」
武史「なんだ?」
葵「お帰りなさい」
武史「ああ」
葵「ただいまでしょう?」
武史「(不承不承)ただいま」
葵「もう出て行かない?」
武史「そのつもりで帰ってきたのに、お母さんはわかってくれないんだ」
葵「お母さん、お父さんを信じてあげられない? 許せない?」
しおり「そんなこと言われてもねえ」
葵「教会の神父さまも言っていたじゃない? 愛するとは信じることだって」
しおり「うちはカトリックじゃないのよ」
葵「お母さん、帰ってきたお父さんを信じられない?」
しおり「そんなことより葵。お母さんとお父さん、どっちが好き?」
葵「お母さん。もうひとり赤ちゃんを産むなら男の子と女の子、どっちがいい?」
しおり「こっちの質問に答えなさい」
武史「男の子だったら、少しは俺の気持もわかってくれるのかな」
葵「ねえ、お父さん。お姉ちゃんと私、どっちが好き?」
武史「どっちもだよ」
葵「じゃあ、私はどっちも嫌い。喧嘩をして子供を悲しませるような親は、お母さんもお父さんもどっちも嫌い」

  SE 葵はその場から出て行く。
  激しくドアが閉まる音。

葵M「(おどけて)えっへん。どうだ。うまいだろう。私は頭がいいのだ。こうしてうまく喧嘩をおさめたのだから。子供は親が思っているよりも賢い。父はいままで通り帰ってくるようになり、母はいきなり聖書を読み始め、桜が散り、私は小学6年生になった。そろそろ決めなければいけないとお医者さんに言われた。中学生になるまでにはと。その日、ずっと母に連れられて行っていた病院にはじめてひとりで行った」

  SE 病院の雑音。アナウンス。

医者「今日はえらく女の子らしい格好だね。かわいい女の子がひとりで入ってくるので驚いたよ」
葵「友達からもらった服なの」
医者「女性になることに決めた?」
葵「ねえ、先生。聞いていい? お母さんがそばにいるとなかなか聞けなくて」
医者「いいよ」
葵「女の子が女の子を好きになるって変?」
医者「葵さんくらいの年齢ならよくあることだよ。めずらしくない」
葵「私ね、思ったの。男の子を好きになるのが女の子で、反対に女の子を好きになるのが男の子じゃないか。どう? 頭がよくない?」
医者「残念ながら、そうとは限らない。同性愛者がいるからね」
葵「そうなんだ。ハズレか」
医者「葵さんは好きな人がいるのかな?」
葵「(悪戯っぽく)秘密」
医者「(笑い)秘密、大いに結構」
葵「先生は男でよかったと思っている?」
医者「難しい質問だね」
葵「ほら、お医者さんは男性が多くて、看護師さんは女性ばかりでしょう?」
医者「いまは女性の医者、女医さんも増えているけれど、まあ、そうだよねえ」
葵「お医者さんのほうが偉いんでしょう?」
医者「(笑い)意地悪な質問だな」
葵「お金はもうかる?」
医者「(笑い)意地悪になったなあ」
葵「じゃあ、男になったほうがいいのかな?」
医者「医者になりたいの?」
葵「そういうわけじゃないけれど」
医者「いろいろ考えているんだね」
葵「先生は、僕とか言っちゃおう。僕がどっちになったほうがいいと思う?」
医者「それは先生には決められないな」
葵「男性と女性の違いってなんなの?」
医者「難しいことを聞いてくるなあ。まずは外性器の違いだね。胸がふくらむかどうか。それから、なんて言えばいいかな。女の子には言いにくいな」
葵「(ふざけて)僕には言っていいです」
医者「まあ、その、下についているものの違いだね。これがひとつ目。ふたつ目は生殖。子供を産めるかどうか。大まかに言ってこのふたつだね」
葵「へえ」
医者「でもね、子供を産めない女性が女性でないかと言えばそうではない。お金はかかるけれど外性器も手術で整形できる。葵さんの場合は病気だから、そんなにお金はかからないけどね」
葵「だったら、男性も女性もそう変わらないってこと?」
医者「そういうことになるね。背の高い女性も力持ちの女性もいるからね」
葵「(恥ずかし気に)あとひとつ聞いていい?」
医者「なんでも」
葵「――」
医者「どうしたの? なに?」
葵「やっぱやめとく」
医者「(セックスのことだと気づき)なんでも知ればいいってもんでもないからね」

  SE 工事の騒音。

親方「(荒っぽく)本社からヘルプに来たって、こんなものくらい運べなくてどうするんだよ。役に立たねえな。どうせ本社は現場仕事を舐めているんだろう。1日くらい本気を出せないのか」
武史「はい。すいません。精一杯やっているつもりなんですが、どうにも」
親方「男がそんな弱音はいてどうする? 本社のやつは女みたいだな。男らしく気合を入れろ」
武史「はい。わかりました」

  SE 安酒場のわいわいとした騒音。

女性バイト「ちょい飲みセット、いただきました」
板前(男)「かしこまり」
武史M「ああ、腰が痛いな。無理なものは無理なんだよ。現場仕事なんてさせんなよ」

  SE コールセンター。女性の電話で話す声があちこちで飛び交う。

しおり「たいへん長らくお待たせ致しました。霧島がうけたまわります。本日はどのようなご用件でしょうか?」
男性「(酔っている)ねえ、おねえさん。今日、履いているパンツの色、教えて」
しおり「恐れ入りますが、そのような質問にはお答えできかねます」
男性「じゃあさ、まえにセックスしたのいつ? 経験人数、何人?」
しおり「たいへん申し訳ありませんが、おかけになる場所を間違っているのではありませんか」

  SE 混雑した駅。

しおりM「男ってやつは――バッカヤロ。私だって男みたいに昼からお酒飲んでメチャクチャしたい」

  SE 茜がバイオリンでへたくそなバッハの「ガボット」をひいている。やめて。

茜「レオナルドさんどう?」
レオナルド「はじめて1年も経っていないのなら充分だよ」
茜「先生の教え方がうまいから」
レオナルド「そう言われると嬉しいな」
茜「レッスンの先生よりもはるかにうまい」
レオナルド「そうかな。ユリエはなにをしているんだろう? ちょっと見て来るね」

  SE レオナルドは出て行く。
  ドアが閉まる。

茜M「うーん。女に生まれてよかったかも」

  SE ドアが開く。ユリエが入ってくる。

茜「あれ? ユリエ? レオナルドさんは?」
ユリエ「キッチンでなんかガサガサ探していた。それよりユリエ、今日どうしたの? すごいお洒落して」
茜「どう?」
ユリエ「うん。女の子っぽくてかわいい」
茜「どうせ女の子(姿)の葵にはかなわないけどね」
ユリエ「ひがんでいる」
茜「それよりユリエありがとう」
ユリエ「なにが?」
茜「わざとレオナルドさんとふたりきりにしてくれたんでしょう?」
ユリエ「もしかして茜、お兄ちゃんのことを(好きなの)?」
茜「うん。クラスの男子なんかよりよほど大人だし」
ユリエ「あいつ、最近、なんか男くさくなって嫌いなの。やたら威張るし」
茜「えええ。妹だとよさがわかんないんだ」
ユリエ「お兄ちゃん、彼女いるよ」
茜「知っている。葵のお姉さんでしょう」
ユリエ「知っていたんだ」
茜「葵の家に遊びに行ったとき会った。背が高くて、頭がよさそうな人だった」
ユリエ「うーん。どうだろう。お兄ちゃん、年下が好きだから。一度、葵に変なことをしようとしたことも」
茜「葵もレオナルドさんが好きなの?」
ユリエ「どうかな? あれは悪戯でからかっていただけか」
茜「よかった。競争相手が多くなっても困る」
ユリエ「競争するの?」
茜「どうしよっかな(悪戯っぽく笑う)」

  SE 雨が降っている。

葵M「梅雨になって、うちの景色も変わった。聖書を読んでいたせいなのか、母はなにか吹っ切れたような明るい顔をしている。父は決まりの悪そうな顔で、それでも家にはきちんと戻ってくる。母が陽気に僕の好きなハンバーグを作った日、姉がなかなか帰って来ないので先に食べようということになった。みんな食べ終わったとき姉が泣きながら帰ってきたのだ」
しおり「緑、どうしたの?」
緑「なんでもない」
しおり「ハンバーグ焼こうか?」
緑「今日は夕飯いらない」

  SE 緑はリビングを出て行く。

武史「いったいなにがあったんだ?」
しおり「女の子にはいろいろあるのよ」
武史「だからって」
しおり「こういうときは放っておくほうが、かえっていいの」
武史「葵、行ってやれ。きょうだいのほうが話しやすいだろう」
葵「うん。わかった」

  SE ドアをノックする音。

緑「だれ?」
葵「葵。お父さんが行けって」
緑「入って」

  SE 葵は緑の部屋に入る。

葵「どうしたの?」
緑「今日の葵、なんだか男の子みたい」
葵「そう?」
緑「レオナルドのやつがね」
葵「うん」
緑「あんな小学生のどこがいいのよ」
葵「どういうこと?」
緑「別れようって。自己主張の強い女は嫌いだ。どうして女が自分の意見を言っちゃいけないの? 女は男の話をハイハイって聞いていればいいの? あの茜って子、葵とつきあっていなかった?」
葵「ええと」
緑「じゃあ、葵も振られたんだ。うちはさんざんね。お母さんはお父さんに逃げられる。お父さんは女に振られて帰ってくる。私はレオナルドに振られ、葵は――。あれ? 葵、本当にあの茜って子、好きだった? 葵はユリエのほうが好きだと思っていた」
葵「僕は――」
緑「ほら、あの子、胸、大きいじゃない?」
葵「僕をバカにすんなよ」
緑「男ってそうじゃない?」
葵「わからない。そうなの?」
緑「わからなくなってきた。レオナルド、小学生の女の子のほうがいいって、なにそれ? そんなのあり? そんなに年下の小さな子のほうがいいの?」
葵「茜は大人っぽいところがあるから」
緑「でも、小学生は小学生でしょう?」
葵「お姉ちゃん、変なこと、聞いていい?」
緑「なによ」
葵「その、なんというか、彼と(小声になり)したの?」
緑「なにそれ?」
葵「ええと、その、お父さんが女の人としたようなこと」
緑「いやらしい。姉にそういうこと聞くか?」
葵「そうだよね。ごめん」
緑「どうしてそんなこと聞くの?」
葵「いや、どんな感じなのかなって」
緑「男の子みたい。いやらしい」
葵「そうなの?」
緑「していない。これでいい?」
葵「うん」
緑「葵、ませてきたな。久しぶりに喧嘩するか? かかって来い。ふん。根性なし。なら、こっちから行くぞ」

  SE 葵と緑が取っ組みあう。

葵M「ベッドでしばらく上になったり下になったりした。僕よりも身体の大きい姉にかなうはずがない。くみしかれた。姉は泣いていた。ひとりにしたほうがいいと思い、こっそり部屋を抜け出してリビングに行くと、父がひとりでお酒を飲んでいた。ウイスキー。とてもさみしそうだった。僕はコップにお茶をくむと父のまえに腰かけた」
武史「フフ。女も辛いのだろうが、いろいろ男も辛いんだ」
葵「――そう」
武史「どうだった?」
葵「――うん(言わないほうが)」
武史「そうか。言いたくないか。それでいい。黙っているのが男だ。こうしていると、息子と酒を飲んでいるみたいだ」
葵「お父さん」
武史「なんだ?」
葵「女の人ってそんなにいいの?」
武史「親にそんなこと聞くなバカ(苦笑)」

  SE チャイム。学校。休み時間。声変わりした男子の大人ぶった話し声。
  うるさいほどのセミの鳴き声。

ユリエ「男子、いやらしいの。このまえなんか偶然のふりして胸、触ってきて」
葵「ユリエ。もてるから」
ユリエ「私は葵が好き。ねえ、今度、ふたりで海に行かない?」
葵「私、泳げないし。知っているでしょ? 私、水着、ダメなの。男の水着も女の水着も恥ずかしいから。いつもプールの授業は見学」
ユリエ「泳がなくていいじゃない。夕焼け見て、暗くなったら花火して、ジュース飲んで、お菓子食べて。葵のお姉さんからいいスポットを教わったの」
葵「どっちの格好をして行けばいい? 男? それとも女?」
ユリエ「葵の好きなほうで」

  SE 電車が走る。

葵M「ユリエはそのほうが喜ぶと思ったから僕はどちらかと言えば男の子っぽい格好で行くことにした。海辺はひっそりしていた。海で見る夕日はきれいだった。茜色ってこういう色を言うんだなと思った」

  SE 寄せては引き返す波。

ユリエ「待って。だれかいる。隠れよう。あれ? あれあれ? あれうちのお兄ちゃんと葵のお姉ちゃんじゃない。うわあ、抱き合ってキスしている」
葵「本当。どうして?」
ユリエ「知らなかった? 茜、振られたんだって。子供っぽいって」
葵「そうなの」
ユリエ「男は自分勝手。ああ、あのふたり手をつないでどこに行くんだろう?」
葵「とめなきゃ」
ユリエ「お姉ちゃんが心配?」
葵「うん」
ユリエ「どうして? ああ、行っちゃった」

  SE 波の音。打ち上げ花火。
  最後に線香花火。

ユリエ「妖(あや)しい光。これから私たちも少しずつこの光の中に入っていくのね。いやがおうもなく。どうしようもなく」
葵「これから何回も花火をするだろうけれど、今日のユリエとの花火は忘れないと思う」
ユリエ「私も忘れない。絶対、忘れない」

  SE 寄せては引き返す波。

葵M「しんとした時間の中にいた。夏なのに寒気がするほど線香花火はさみしそうだった。最後の線香花火が終わると、なにも言わずにユリエは服を脱ぎ始めた。あっという間に下着まで脱いだ。月の明かりに照らされたユリエの裸。ふくらみかけの大人と子供の中間のような胸。腰のくびれ。それから――」
ユリエ「どう? 私、発育いいって言われているけど、でも、まだまだ大人じゃない」
葵「とってもきれい」
ユリエ「葵はどうしたい? こうなりたい? それとも私になにかしたい?」
葵「そんなこと言われても困る」
ユリエ「葵も服を脱いで」
葵「絶対に、やだ」
ユリエ「どうして?」
葵「私、男子でも女子でもないから。物心ついてからお母さんとお医者さんにしか見られたことがない。温泉や銭湯に一度も入ったことがない」
ユリエ「そう」

  SE バイオリンで奏でる讃美歌320番「主よ御許に近づかん」。

葵M「そのときなぜか教会で聞いた讃美歌が聞こえてきたような気がして、私は人前ではじめて裸になった。もうすぐ男か女になってしまうのだ」

  SE 寄せては引き返す波。

葵「どう?」
ユリエ「きれい。そのままできれい。この世のものではないみたい。――まるで神さまみたい」
葵「(脅えて)まだ私のこと好き?」
ユリエ「もっと好きになった。葵が大好き」
葵「怖かった」
ユリエ「葵は神さまから選ばれた子なのよ」
葵「本当に怖かった」
ユリエ「勇気出したんだ?」
葵「うん。いっぱい、いっぱいね」
ユリエ「ありがとう」
葵「なんで?」
ユリエ「なんかそう言いたくなったの」
葵「神さまか」
ユリエ「うん、そう。神さま」
葵「神さま」

  SE そのまま讃美歌が続いて。
  クリスマスの街のにぎやかな雑踏。

葵M「その日、私と姉はそろって父からも母からも叱られたのだった。私は姉のことは秘密にしておいた。(ゆっくりと)紅葉の秋が終わり、クリスマスは去年のようにユリエの一家と教会のミサに行き、年越しそばを食べたと思ったら新年で、とりあえず性別を決める手術の日を予約した。小学校の卒業式の翌日だ」

  SE バイオリンで演奏される「仰げば尊し」。

ユリエ「明日には葵、男か女になっちゃうんだ。なんかさみしい」
葵「だんだんとだけどね。ユリエ、おしゃべりしていると先生に怒られるよ」
茜「ねえ、葵」
葵「茜も。先生、こっち見てる」
茜「そろそろ私たちになら教えてくれてもいいじゃない。男と女、どっちになるの?」
葵「内緒。中学みんな別々だからバラバラになっちゃうね」
ユリエ「葵の行く中学校、うちの小学校からだれも行かないんでしょう?」
葵「わざとそうしたの。お母さんがそうしたほうがいいって言うから」

  SE 黒板がバンバン叩かれる。

男性教師「そこ、おしゃべりしない。先生の最後の話くらい聞けないのか」

  SE ドラマの終わりを示すかのように何度も黒板がバンバン叩かれる。

葵M「これで私の話は終わりです。白状すると実はまだ男になるか、女になるか決めていないのだ。私の話を聞いてくださった大人のみなさんに質問。男と女、どっちがいいですか? 男性と女性、どちらがおすすめですか?」     (終)

※最後までお読みいただき本当にありがとうございます。
女性は声変わりをしませんから、
小学生のセリフでも中学生、高校生の女優(声優)が言えます。
拙作に登場した主なバイオリン曲は以下です。






コロナワクチンって3回目で終えるのが大半なんだ。
知り合いとかいないから知らなかった。
まあ、突然死できるのならラッキーだなあ。安楽死みたいなもんじゃん。
そのくらいの気分だった。
そういえば5回目を受けているのは老人ばかりだった。
どのみちもうすぐ死ぬって慶應病院の循環器内科、
藤澤大志先生に言われているのだからさ。
「本当に本当ですか?」
「何度言ったらわかる? 僕はウソを言わない医者だ」
「先生の医師人生をかけて言えますか?」
「しつこいなあ。ああ、慶應医学のプライドをかけてもいい」
「僕はもうすぐ死ぬんですね。ああ、死ぬのか」
「5年生存率20%。いますぐ死んでもおかしくない。これは医学的なファクトだ」
「どうしたらいいんですか?」
「それは患者――土屋さんが決めることでしょう?」

46歳でコロナワクチンを5回も打っているやつなんかいるか?
死んでもいいから。どうせそのうち死ぬんだしさ。
死んだら、ボケだと思われるが、
わたしを憎悪かつ毛嫌いしている父を喜ばせることができる。
ろくな親孝行はしなかったから最後くらい父に歓喜をプレゼントしたい。
「死にたくない」と叫んでいるニコチン中毒の文芸評論家がいるが、
20歳以上年下の奥さまはこれからえんえんと介護だぞ。
本を出してもらったのは2冊だっけ? ポストも斡旋してもらえなかった。
当てが外れたというのが正直なところではないか。
ニコチンきちがいは私小説に周囲のほぼ全員の悪口を書いていたが、
奥さまへの不満だけは書かず、あたかも仲良し夫婦のようなことを書いていた。
あれは自分の元から逃げたら際限なく悪口を書き続けるからなという脅迫とも読める。
恐ろしい人だ。
自分は長生きして、打算的に結婚選択を誤った若い妻を介護地獄に落とす計画だろう。
逃がさないよう手足を縛っているのも心憎いほどのやり手である。
尊敬している作家のひとりだが、長寿願望がわからない。
マニラ往復3万6千円はあったけれど、2月14、15日のはない。台湾もない。
3月に入っちゃうと、そのまえに某公募の締切があるから体力をキープできない。
これは大人しく神戸にでも行って宮本輝の豪邸でも記念写真に撮るとするか。
よく考えたら全国旅行割でドミトリーに泊まらなくても同額で、
まともなホテルに泊まれるかもしれないしさ。断念するいさぎよさも必要と判断。

明日は慶應病院で心エコー検査。いくらするんだろう?
2月14、15日は絶対に家にいたくない。
その理由は言えないけれども、ひどく陰鬱な気分になる。
だから、旅をしたいって、おまえ生活保護直前だろう?
しかし、なにがどう出るかなんてわからないじゃないか、とも思う。
井上靖いわく、小説創作の滋養になるのは旅と読書。まあ、外的刺激だな。
それで運よくなんかの賞が取れたら元を取ったということだろう。

マニラ、フィリピンに興味を持ったのは、
東南アジアでほとんど唯一のキリスト教国だから。カトリックね。
いままで仏教国にしか行っていなかったから、どんなもんかいなと。
最近、応募作にカトリック教会を連続して出しているし。
コロナワクチン接種証明が必要だが、インターネットで調べてもわからない。
板橋区が出してくれるのでいいのかどうか。
いまどもりがマックス激重。口から言葉が出てこない。
なのにランドセンを制裁のつもりか半分に減らしやがって、あの精神科医!
どもりどもり外務省に電話しましたよ。
お国は優しいよね。障害者もちゃんと相手にしてくれる。
板橋区役所に行って外国版を発行してもらえとのこと。
区役所にどもりどもり電話したら徒歩1分の板橋健康保険所で無料発行。
しかし、マニラとかよくわかんないんだよね。
5ちゃんを見てもエロの話題ばかりだし。

ちなみに台湾はなにも必要なしよ。でも1回行ったことあるしなあ。
先が読めるというか、刺激が弱い。カラスミは安くてうまいけれど。
それにホテルが高すぎる。3千円で高いというのもあれですけれど。
マニラのスラムみたいなところに昼間に行ってみたいんだよな(教会もだけど)。
刺激に飢えているところがある。
心不全で大丈夫なのかって? いま節制しているし、
このまま続けたらなんとかなるような気がする。
ならなかったら死んでもいい。海外旅行保険でお金を残せるだろう。
ボケてわたしを憎んでいる父とか息子の死を知ったらバンザイするのではないか?
だとしたら、最後に親孝行できるではないか!
しかし、マニラのホテルがわからない。1泊千円とかあるけれどドミトリー?
海外でドミトリーはいやだよ。日本ではいいけれど。
ジェットスターのバーゲンチケットは取れるのか? それでも高いんだよなあ。
日本の呪縛から解放されたい。
それにしても、このコロナ禍にマニラに行きたいやつなんているのか。

やはり神戸くらいがいいのかしら。
で、テルニスト(宮本輝信者)のおっさんの喫茶店で話し込む。
けれど、わたしは純粋テルニストではないから嫌われないかしら。
ホームページを見るかぎり温和そうな方だから、
宮本輝のようにいきなり怒鳴ったりはしないでしょうけれど(これを低学歴プッツンという)。
「俺を舐めるなよ」とかいきなり怒鳴るのが低学歴プッツン(コンプレックスとも)。
目下のものにはものすごい怒りっぽいっていうしね宮本輝(遠藤周作とそっくり)。
目上の池田先生には奴隷的恭順を示すのにさ(「無言の叱責」事件)。
「弱いものには強い、強いものには弱い」――まこと学会員は人間味があってよろしい。

たまにはいいこともあるもんだ。
去年、定期巡回(警戒? 心配?)に来てくださる某暑の刑事さんに、
太宰治賞の応募作を渡したんだよ。
「どうせつまらないですから、途中で捨ててくださって結構です」と言いながら。
書いた直後だったから興奮していたこともある。
昨日、ぜんぶ読んでくださったとおっしゃる
(自分から読んでくれましたか、なんてとても恥ずかしくて聞けない)。嬉しかった。
「ありがとうございます」と最敬礼したもの。
なんでもその警察署の署長さんと副署長さんも目を通してくださったのこと。
つまらないものをお読みいただいて申し訳ないですが、これほど嬉しいことはない。
わたしは業界内部の人にだけ通じる話ではなく、
ふつうの人でも読める小説を書きたいがため。
内輪受けする小説なんて嫌味なものじゃん。
大江健三郎の小説なんてふつうの人が読めるか? あれのどこに価値があるんだよ。
わたしの感覚では拙作をもらってくれるだけで「ありがとう」ですね。
途中まででも読んでくださったら「ありがとうございます×10」。
最後までお読みいただけたら「ありがとうございます×100」。
お世辞でもほめてもらえたら感涙する。
拙作でお金をもらうなんてね。そんな傲慢なことは考えていない。

とはいえ、人ぞれぞれで、
新人文学賞に1次落ちした自作小説を2千円とかで販売している人もいる。
あたまのネジがゆるんでいるのかしら。
1ページ立ち読みしただけで「ごめんなさい」と思ってしまう。
人それぞれだよなあ。
わたしなんて読んでくださるのなら、メールでだれにでも送るけれど。
感想なんかもったいなくていただけません。
途中まででも読んでくださっただけでありがとうございます。
昨日、クーポンがあったので、
西村賢太の「やまいだれの歌」を電子書籍(パソコンで)読了。
あのくらいだったらお金を取ってもいいと思う。
うまいなあ。さすがだなあ。
全作は読んでいないが「やまいだれの歌」は西村賢太の最高傑作ではないか。
おもしろい小説がいちばん。
2月中旬は、墓場まで持っていく事情で旅に出たいんだよ。
まだ身体が動くうちに最後の海外に行きたいけれど、ジェットスターでマニラがあるなあ。
あそこお酒安いっていうしねえ。でも、航空券が高い、高い。
万が一バーゲンで買えても往復5万。最後にアジアの屋台に行きたいなあ。
でもなあ金銭面でねえ。

日本で行きたいところか。神戸なんてどうだろう?
わたしは神戸にちょっとご縁があって、
宮本輝ファン喫茶店のオーナーからお電話をいただいたことがある。
「青いカフェ屋根」だっけなあ。宮本輝の噂話をいろいろ聞いたものである。
電話で「一度来い」っておっしゃっていたのを真に受けていいのかなあ。
宮本輝の豪邸の場所も教えてくれることだろう。
記念写真を撮るのも悪くない。
名作長編「青が散る」の舞台、追手門学院大学も(わからないが)近くではないか?
たしかちっぽけな宮本輝ミュージアムがあるのでは?
しかし、そのくらいしか見どころがない。
あとは旧同和地区くらいだろう(笑)。それから山口組事務所(笑)。

JRの障害者割引は精神の障害を患っているものには使えないのね。差別だ!
夜行バスで往復7000円。ゲストハウス、ドミトリーで1泊2500円。
今月26日に宮本輝の新刊小説「よき時を思う」が出る。
早速予約。日本でいちばん早くネット上に感想を出してみたい。
どうせ太鼓持ちの絶賛書評がいくつも出るだろうが、
やつらは絶対に書くまえにネットの評判を調べる。
なぜなら自分の感想に自信を持てないから。
そこにわたしのいつものネトネトした感想文がヒットすると思うとおもしろい。

小谷野敦さんの新作「幻肢痛」はだれにも読まれていないなあ。
たぶんまともな感想文を出したのは「本の山」がファースト。
以降の感想文はみんな拙文に肯定否定に関わらず左右されるから見てみい。

*ああ、わたし、宮本輝のファンクラブ関係にはすべて入会拒否されていますから(笑)。
「幻肢痛」(小谷野敦/「文学界」2月号)

→最新の純文学とやらをひさびさに読む。ストーリーラインは3つ。
1.煙草をやめたはいいけれど、結局、ニコチン中毒は治らないという愚痴。
2。血便が出たので痔か大腸がんかえんえんと迷い、
思い切って内視鏡検査を受けるが結局がんではなかった。死にたくないよう。
3.著者が関係した人たちへ日々感じた不満の吐露。

病院通いは長いけれど、夫婦で一緒に来る老人というのがわからなかったが、
なるほど、こういう不安を感じて来るのかという発見があった。
ひたすら著者が20歳以上年下の奥さまに依存しているのである。
死への恐怖、病気への不安が強いからだろう。
わたしはずっと孤独だったからわからなかったことでもある。
緊急入院は2回したけれど、
姉の手伝いを入院時に借りただけで、あとはぜんぶひとりでこなした。
板橋中央総合病院で入院中、左腕に点滴をつけながら、
寒空の中、屋外にて右手だけで洗濯をしたときの悲哀は忘れられない。
たった2泊3日の入院で大騒ぎする著者の弱気は日頃見せる尊大な態度とは大違い。
笑ったと書いたら失礼になろう。

大腸内視鏡検査をしてから、結果が出るまでの、
「大腸がんではないか?」という極度の不安は子供のようで、
奥さまにママのようにすがりつく老醜はあわれこの上ない。
憫笑を禁じ得ないというやつだ。
経験していないからだろう? と言われるかもしれない。
いな、である。わたしの場合はもっとひどかった。
板橋中央総合病院の鈴木医師から「8:2でがんだね」と言われおなじ検査をした。
著者の病院は痛み止めを打ってくれたそうだが、
板中はいきなりぶちこんでくるので、痛みで泣き喚いた。
で、著者とおなじように3週間の結果待ちである。
「8:2」でがんとか言われているわけだ。
結局なにもないと言われても医者への恨みは消えなかった。
しかし、あのくらいの不安であまりにも大仰に嘆き過ぎでは?
どうしてそんなに長生きしたいのか、まるでわからず。

どこまでも他人には厳しい男のようで会う人、会う人への不満を書き連ねている。
「自分がルール」の人なのだろう。あまり関わりたくない人も少なからずいよう。
感謝はしないが、クレームだけは一丁前。
他人の立場からものを見られない人のようだ。もうこの年齢では治らないだろう。
たとえば、自分の講義遅刻は謝罪しないで、学生のホチキスとめ忘れには大幅減点。
精神科に通い、強い睡眠薬のハルシオンとサイレースをダブルで飲んでいるのか?
こういう人もおられると今度、うちの主治医に話してみよう。
それにしても、血便以外にも些細な疾病を気にしすぎている。
生きづらいんだろうなあ。いちいちネットで調べているが、
あれは調べれば調べるほど不安が増すからやめたほうがいい。

新人賞に出したら、まず下読みに落とされるだろう。
なぜなら、だれも赤の他人の健康にあまり興味を持たないからだ。
みんな自分のことで手いっぱいなのだよ。
「もてない男」の末路は以下である。

「久しぶりに性的な夢を見て、
その時ふと目覚めて自分が勃起していることに気づいた。
病気になってからは絶えてないことだったから、
昼間試してみたら射精した
(もっとも勃起なしの射精ならいつでもできた)」(P183〉


まだ印税が入るのだろうか?
貧困恐怖がときおり語られるが、ひんぱんにタクシーに乗ることに驚いた。
住居以外にも埼玉に書庫専用のマンションを購入したとのこと。
あれほど嫌っていたロレックス修理屋だったお父さまの実家を売った金でだ。
ネットで高額購入した1等席で、
歌舞伎を奥さまと見に行くさまは、まるで現代の文化貴族夫婦。
つくづく不遇ぶるのが好きな人である。
もう奥さまに完全に依存しきっており、愛妻がいなくなったらなにもできないようだ。
奥さまの葵さんが若い男と好き合い逃げてしまい、
ひとりきりで「勃起なしの射精」をみじめにも繰り返す――
本当の絶望を味わった著者の私小説を次回は読みたいものである。

ニコチン中毒者による吹けば飛ぶように軽い闘病物の悪口身辺雑記であった。
最後にメッセージを送りたい。

「煙草、吸っちゃいなさいよ!」

どうせいつ死ぬかわからない。小谷野敦さんも刺される危険性がないとは言えない。
宮台真司のように空手をやっていないでしょう? いつどうなるか?
ヘビースモーカーの倉本聰なんて90歳近いのにまだ生きている。
どのみち死ぬのだ。好きなように生きたほうがいい。依存症は治らない。
さてまあ、健康や長生きを目指す作家がいてもいいが、
それを書いたとしてだれが興味を持つのか?
最後にどうでもいいわたしのことを書くと、
サイレースもろもろをのんでも中途覚醒してしまい、
ノンアルコールビールを飲みながらこれを書き飛ばした。
今朝9:30に5回目のコロナ・ワクチンを歩いて3分の病院に受けに行く。
どうやら名作を読んだ興奮で眠れなくなったようだ。
しかし、生に執着する老醜というのは実にけがらわしいものだ。そこをうまく描いている。

せっかく「文学界」を買ったのだから他の最新純文学も読んでみたい。
15年近く本の世界に閉じこもって世間に出てみたら、思ったよりも他人は親切でね。
世間は甘いとかそういう意味じゃなくて、個人と個人になると人は思いのほか優しい。
平凡で、ときに危うい。興味が尽きることのない存在ですね。
基本的に信用に足るべき存在だといまは思っている。底辺労働だったからかな?
いちばん怖かったのはへらへら笑う年下の威張った知的障害者バイトだというね、
差別的かしら。だったら、ごめんなさい、すぐあやまる。
時代的なものかもしれない。むかしはもっと優しくない人が多かった。
いじめられるのは、いじまられるほうが悪いんだろうみたいな風潮がございました。
まさか自分が46歳になっちゃうなんてね。オジンじゃーん♪
これだって山田詠美さんの「僕は勉強ができない」を知らないと嫌味なタイトル。
勉強は好きですよ。底辺仕事を覚えるとか、そういう勉強ではない勉強。
四国愛媛松山でお世話になったOさんから、
「よく(俳句を)勉強してるねえ」と驚かれたくらい。
1週間くらいの、にわか勉強でしたが、一応それまでの蓄積がございますから。
勉強はすればするほどおもしろくなる。
むかしは古文きつかったけれど、いまはけっこうすいすい読める、慣れだよ慣れ。
学術的文章も、あれは要するにどこを飛ばし読みすればいいかですからね。
スピードアップして速読できる。14年もニートしたら、そりゃねえ。
そんな僕でも理解できないのがお国から送ってくる文章。
なに書いてあんのかわからんなあ、と悲鳴を上げる。偏差値70なんだけれど。
こっちから申請するシステムの場合、お国の文章が意味不明。
あえてそう書いているんだろうなあ。さすがだなあ、と感心することしきりです。
2022年は後先のことを考えずに突っ走ったなあ。
だって、医者(慶應の藤澤大志先生)からいつ死ぬかわからないと言われていたからねえ。
余命宣告だ。
そうなっちゃうともうマジメにコツコツとかはね、さすがに「たりぃ」となる。
享楽的にならざるをえない。
ものすごい勉強をして四国愛媛松山に行けたのも余命告知ゆえ。
これまたきちがい勉強をして、
太宰治の生地(聖地)津軽にまで行けたのも余命を意識したから。
そのままノンストップで太宰治賞応募作を一心不乱に、しかし遊び心で書きましたからね。
20年以上、小説を書けなかったが、ふとした拍子に書けるようになった。
そのきっかけをつくってくれた八王子BMWさんには、
もっと感謝しなくちゃいけないのでしょうけれど、人間ができていないので、なかなかね。
小説の書き方? うーん、自分でもよくわからない。太宰治賞がほしい。